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ビジュアルイメージ
数学のヒューマン・インタフェースの窮極の形は,VR(Virtual Reality)──「数学の中を歩き回り,見回し,触れ回る」──です。そして,「マルチメディアの上に実現されたVRを探検する」が,学習形態のゴールになります。
もちろん,これはいまは夢物語です。しかし,視覚化(visualization)
(註)
はこの方向への現実的な第一歩であると同時に非常に大きな前進になります。数学のヒューマン・インタフェースの課題としてわたしたちが当面取り組むことになるのは,この“数学の視覚化”です。
実際,伝来の文字メディアが視覚的なメディアに替わることは,数学の教授/学習の大きな様変わりになります。多くの数学的主題が,文字メディアをビジュアルメディアに替えることで飛躍的に理解しやすくなります。数学学習においてビジュアル・シンキング(visual thinking)が可能となり,かつ一般的になっていきます。
但しこのことは,文字メディアによって捨てられてきたものの回復と考えるべきです。「ビジュアルメディア」とは,差し当たり,「説得性の回復」という主題のことです。
ビジュアルメディアの導入に対して,文字メディアに対する感性の減衰を危惧する理由は確かにあるでしょう。即ち,「イメージの固定化」ということである。しかし,文字メディアにはその反対の「イメージの多様化」が対応していたでしょうか? 数学教育に限れば,「イメージをもてない」(ノンカテゴリー)が対応していたのです。そして,少なくとも数学教育に限れば,「イメージの固定化」をおそれる理由はありません。何故なら,わたしたちの場合,一つのイメージの特権化はあくまでも生成の核としての特権化に他ならないからです。そして実際,それは必要なことです。
(註)
これを,「頭の中にイメージを浮かべて考える」のように解釈してはなりません。あくまでも「ビジュアルなメディアの上で考える」ということです。