Up 知識表現手法「テンソル」(人工知能) 作成: 2018-04-25
更新: 2018-04-25


    行列ないし高次表形式を「テンソル」と呼ぶ慣習──これが最も素朴に現れている例に,人工知能の知識表現手法「テンソル」がある。


    類概念 (カテゴリー) を,集合に表す。
    二つの集合
      \[ A = \{ a_1, \cdots, a_m \} \\ B = \{ b_1, \cdots, b_n \} \]
    に対し,\( a_i \in A \) と \( b_j \in B \) の関係の強さを,\( r_{ij} \) で表す。
    そして,行列
      \[ \left( \begin{array}{ccc} r_{11} & \cdots & r_{1n} \\ & \cdots & \\ r_{m1} & \cdots & r_{mn} \\ \end{array} \right) \]
    を,AとBの関係概念とする。

    この関係概念は2次元であるが,つぎに次元を増やしていく。
    即ち,新たな類概念を集合
      \[ C = \{ c_1, \cdots, c_p \} \]
    として導入し, 「\( c_k \in C \) における \( a_i \in A \) と \( b_j \in B \) の関係」という考え方をする。
    この関係は,\( r_{(ij),k} \) の表現になり,結局 \( r_{ijk} \) の表現になる。
    そしてこれは,3次元の表をつくったことになる:

    このやり方を繰り返すことで,高次元の関係概念をつくっていくことができる。
    そして,この関係概念の表現は,高次元表である。
    人工知能研究では,この形式を「テンソル」と呼んでいる。

    「次元を増やす」の意味は,「概念を複雑にする」である。
    人にとってふつうである概念は,分析するとひじょうに複雑なものになる。
    人工知能研究は,この複雑のシミュレーションを課題にする。
    そして,アプローチの一つが,「概念を<高次元表>に表現」──「テンソル」──というわけである。