Up | テンソル場とは何か | 作成: 2017-12-13 更新: 2017-12-13 |
具体的にということで,現象を地球の自然現象にする。 温度とか,風とか,重力とか,磁気とか。 地球に現象「X」が観察されるとき,「地球はX場である」ということにしよう。 「地球の現象」と言うとき,これには「場所に依って現れが違う」が含蓄されている。 地球の現象Xの記述は,場所ごとの観測データの記述である。 しかしこの捉えは,すぐに拙いものであることが判る。 同じ地点でも,観測データは時間によって違ってくるからである。 この場合,「時間を固定する」はよいアイデアではない。 データの「同時」を考えることは実際問題として無理であるし,そもそも理論的に不自由である。 そこで,「場」を地球で考えるのではなく,地球と時間を合わせた地球時空で考える。 地球3次元,時間1次元ということで,4次元で考えるわけである。 別にフィクションをやろうというのではない。 現象は<いつ・どこで>で考えるものであり,そして<いつ・どこで>の記述枠は4次元座標になるのである。 (1) スカラー場 単位を定めて温度を測る。 値は,スカラーが一個である。 これは「温度は1次元ベクトル」ということである。 しかしここは敢えて,「温度はスカラー」と言うことにする。 そして,「地球時空は,温度スカラー場である」と言い表す。 地球時空の点ごとに温度が違うとは,スカラー値が違ってくるということである。 (2) ベクトル場 風は,ベクトルである。 これを記述するには,風の向きと大きさを測る「基底」を定める。 この値は,スカラーが3個のベクトルになる。 このことを,「地球時空は,風ベクトル場である」と言い表す。 地球時空の点ごとに風が違うとは,ベクトルの項の値が違ってくるということである。 同様に,地球時空は重力ベクトル場,磁気ベクトル場である。 (3) マトリックス (行列) 場 いま仮に (まったくの嘘であるが),重力と風が「原因─結果」の関係にあるとする。 重力と風は,基底を定めて数ベクトルに表現される。 ここで,風の数ベクトルは,重力の数ベクトルに行列を掛けて計算できるとする。 この行列を,例えば「重力風」と呼ぼう。 このとき,「地球時空は,重力風マトリックス場である」と言い表す。 地球時空の点ごとに重力風が違うとは,行列の項の値が違ってくるということである。 (4) テンソル場 現実は,「原因─結果」が複雑である。 そこで,「原因─結果」の複雑さ加減を,できるだけ忠実に記述することを考える。 ただしあまり複雑にすると手に負えないので,原因を何種類かのベクトルの組とし,結果を何種類かのベクトルの組とする。 そして,原因のベクトル群から結果のベクトル群を導き出す計算式があり,<行列を何回も掛けたり足したり>がこれの中身になるとする。 この試みが,ある現象──仮に「なんじゃもんじゃ」と呼んでおく──の記述において成功したとしよう。 このとき,「地球時空は,<なんじゃもんじゃ>テンソル場である」と言い表す。 何で「テンソル」かというと,<行列を何回も掛けたり足したり>が中身の計算式は,物理学や工学の謂う「テンソル」だからである。 地球時空の点ごとに<なんじゃもんじゃ>が違うとは,計算式の中の定数の値が違ってくるということである。 以上,(1), (2), (3), (4) と段階を踏んできたが,(1), (2), (3) は (4) に包摂されるものである。 つまり,全部一括りに「テンソル場」と言える。 またここでは,イメージの簡単のために「地球時空」を使っただけであり,「テンソル場」は一般時空の内容になるものである。 ここで考えるべきは,《「テンソル場」はどんな世界観を提示したのか》である。 「テンソル場」の概念は,世界を,「各点に<温度>が立っている」という具合に「各点に<計算式>が立っている」と見させるのである。 特に,<いま・ここ>の温度,風,重力,磁気,その他もろもろは,ひとが「温度」「風」「重力」「磁気」「その他もろもろ」と捉えたものであり,その捉えは<計算式>の捉えだ,ということになる。 「テンソル場」の概念は,アインシュタインが一般相対性理論で提示したものである。 一般相対性理論に触れた者は,少なからず新たな世界観を得ることになる。 その世界観が,「各点に<計算式>が立っている」である。 |