「タテ×ヨコ=面積」に対しては,つぎの構成要素を見る:
- 実ベクトル空間 \( U,\, V,\, W\)
\( U\) : タテ(長さ) 全体
\( V\) : ヨコ(長さ) 全体
\( W \) : 面積全体
- 双線型写像 \( \phi : U \times V \to W\)
\( \phi \) : (タテ \({\bf x}\), ヨコ \({\bf y}) \longmapsto\) タテ \({\bf x}\), ヨコ \({\bf y}\) の長方形の面積
ここで,量をベクトル──大きさと向き──に見る方法は,量に「増」をつける:
「双線型写像 \( \phi : U \times V \to W\) 」の意味は:
- \(U\) の元 \(\bf u\) を固定したときの写像
\( {\bf x} \longmapsto \phi({\bf u},\,{\bf x}) \quad ({\bf x} \in V) \)
は,\(V\) から \(W\) への線型写像
- \(V\) の元 \(\bf v\) を固定したときの写像
\( {\bf x} \longmapsto \phi({\bf x},\,{\bf v}) \quad ({\bf x} \in U) \)
は,\(U\) から \(W\) への線型写像
実際,小学数学では,つぎのことが指導される:
「タテの長さが2倍,3倍,‥‥ になれば,
長方形の面積も2倍,3倍,‥‥ になる。
ヨコについても同様。」
つぎは,集合 \(U \times V\) 上の同値関係になる:
\[
({\bf x},\,{\bf y}) \sim ({\bf x'},\,{\bf y'}) \ :\ \phi({\bf x},\,{\bf y}) = \phi({\bf x'},\,{\bf y'})
\]
この同値関係による \(U \times V\) の商集合──同値類の集合──を「\(U \bigotimes V\)」で表す。
また,\( ({\bf x},\,{\bf y})\) が代表元になる同値類を,「\({\bf x} \otimes {\bf y}\)」で表す。
「\(U \bigotimes V\)」は,即ち「タテ\(\bigotimes\)ヨコ」である。
ここでは,長方形の面積が同じになる (タテ, ヨコ) を類別したわけである。
例えば「タテ3cm,ヨコ4cm」と「タテ2cm,ヨコ6cm」は,長方形の面積が同じになるから,「3cm \(\otimes\)4cm = 2cm \(\otimes\)6cm」となる。
\(U \bigotimes V\) は,つぎの算法を以て,実ベクトル空間になる:
\[
\xi\,({\bf x} \otimes {\bf y}) = (\xi\,{\bf x}) \otimes {\bf y} = {\bf x} \otimes ({\xi\,\bf y}) \quad ( \xi \in \mathbb{R} )
\\
{\bf x} \otimes {\bf y} + {\bf x'} \otimes {\bf y} = ({\bf x} + {\bf x'} ) \otimes {\bf y}
\\
{\bf x} \otimes {\bf y} + {\bf x} \otimes {\bf y'} = {\bf x} + ( {\bf y} \otimes {\bf y'})
\]
また,写像:
\[
U \times V \Longrightarrow U \otimes V
\\
\ ( x,\, y ) \longmapsto {\bf x} \otimes {\bf y}
\]
は,「員にそれが属するクラスを対応させる」という写像であり,「標準写像 canonical map」と呼ばれる──略記「can」。
そして,これは線型写像になる。
最後の仕上げが,つぎの図式を可換にする線型写像 \(\bar{\phi} \) である :
この写像は,\(U \bigotimes V\) と \( W\) の同型写像になる。
即ち,\(タテ \bigotimes ヨコ\) と \( 面積\) の同型写像になる。
この同型が,「タテ × ヨコ = 面積」と読まれる。
同型「タテ\(\bigotimes\)ヨコ \( \approx \) 面積」の読みが「タテ × ヨコ = 面積」というわけである。
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