Up 「テンソル」の思想──理論物理の存在論 作成: 2018-01-22
更新: 2018-01-22


    物理学の中で「物理的存在」を措定しようとする。
    さて,どうしたらよいか。
    これは,改めて考えてみると,悩ましい問題である。

    物理学は科学であるから,哲学の存在論のようなことはしない。
    物理学は,操作的にこの問題を処す。


    地域Aのことばaと地域Bのことばbが,どうも同じ物事を指しているように思えるとする。
    このとき,「どうしてそう思えたのか?」と考えてみる。
    答えは,「a, bの用法が同じ (同型) だ!」である。

    ここで,ことばの使われ方の同型が見えるために,必要なことがある。
    地域Aの生活の流儀と地域Bの生活の流儀を,一方から他方へ翻訳できることである。

    物理学が存在問題を操作的に処す方法は,これである。


    即ち,つぎのように置き換える:
      「地域A, B」→「座標系A, B」
      「ことばa, b」→「代数式a, b」
      「a, bの用法が同じ」→「a, bは座標系A, Bの変換の上で対応」
    そして,「a, bは座標系A, Bの変換の上で対応」を「aとbは同じ物事を指している」にする。
    さらに座標系Bを任意にして,「aが指している物事」を<存在>として立てる。

    「テンソル」は,この方法によって理論物理における存在表象にされるものである。

      註: この存在論は,構図において, 「イデア論」である。