1.5.3 量形式の規定
量形式を数の使用形式として理解するのが,本論の立場である。そこで特に,一つの数の系 (N,+,×) に対し一つの量形式が定まることになる(註)。わたしは,これを系
((N,+),(N,+,×),×)
と規定する(§6)。
ここで,三つの因子 (N,+),(N,+,×),× は数の系 (N,+,×) から分離したものであり,((N,+),(N,+,×),×) は,
《第一因子の (N,+) に第二因子の (N,+,×) が第三因子の×によって作用する系》
と読まれるものである。
〈量形式を伴う系〉としての量の系は,このとき,((N,+),(N,+,×),×) と同型な系
((Q,+),(N,+,×),×)
のことである。存在論的には,素材の上に浮かび上がる〈形式 ((N,+),(N,+,×),×) をもった像〉である。
なお,量の系 ((Q,+),(N,+,×),×) に組み込まれているNの要素の身分を言い表わすのに,“スカラ”を用いることにする。
(註) したがって,量形式は“数の系Nに応ずる量形式”と表現されるものである。対応して,量の系も“数の系Nに応ずる量の系”と表現されるものである。
特に,本論では“量形式”の語を
“Nが数の系全体にわたるときの〈Nに応ずる量の系〉すべてに通底する形式”
の意味で用いることはしない。