9.0 イントロ
“距離を時間で割ると速さ",“長さ掛け長さは面積”といった言い回しが,教育現場でも日常的に現われる。しかし,これは明らかに奇妙な言い回しである。
教師も学習者もこの言い回しを簡約した言い方(註)と了解しているのなら問題はないが,両者ともこれを存在規定のように受容しているきらいがある。
本章ではこの混乱を鎮める目的で,上の言い回しが示唆しているところの主題の確認を行なう。
(註) この言い回しが意味をもつとすれば,それはつぎの言い回しの簡約でなければならない:
“距離の単位uと時間の単位vに対し速さの単位として
比例関数 w:時間─→距離 で,w(v)=u となるもの
をとるとき,速さx:時間─→距離でx(u×α)=v×βとなるものに対し,x=w×(β/α)──u,vに対する数値の割り算でwに対する数値が得られる”
“長さの単位uに対し面積の単位として
長さu四方の正方形の面積w
をとるとき,タテの長さu×α,ヨコの長さu×βの長方形の面積はw×(α×β)──u,vに対する数値の掛け算でwに対する数値が得られる”