9.3.5 量の積の“面積”図式
長さの系,面積の系をそれぞれ量の系
((QL,+),(+,+,×),×), ((QA,+),(+,+,×),×)
と見なす。長さの単位uLを定め,そして,一辺の長さがuLの正方形の面積uAを,面積の単位と定める。
さらに,Fを,関係:
F(uL,uL)=uA
で決まる複比例関数:QL×QL─→QA とする。長さx,yに対する面積F(x,y) は,タテの長さx,ヨコの長さyの長方形の面積と一致する。
さて,一般に三つの量の系 ((Qi,+),(+,+,×),×) (i=1,2,3)の間の複比例関数
f:Q1×Q2 ─→ Q3
は,以下の手続きによって,複比例関数Fと同一視できる。
即ち,Qiの単位ui(i=1,2,3)を
f(u1,u2)=u3
であるようにとり,
fi(ui)=uL(i=1,2),f3(u3)=uA
で決まる同型
fi:Qi─→QL(i=1,2),f3:Q3─→QA
を介して,fとFを図式:
のように同一視する。
積f(u1×ξ,u2×ξ) には面積F(uL×ξ,uL×η) ──即ち,タテの長さuL×ξ,ヨコの長さuL×ηの長方形の面積──が対応する。そこで,
f(u1×ξ,u2×η)=u3×ζ
となるζを求めるためのξ×ηの計算が,長方形の面積計算のイメージで行なえることになる。
実際,面積図式:
の中の単位を書き換えた
がfの図式として使われるようになり,さらには,
が,積ξ×ηの図式として使われるようになる。
例えば積分計算(註)が面積計算の意識で行なえるのは,以上の理由による。
(註) 運動のグラフ表示で〈経過時間〉を横軸にとり〈速度〉を縦軸にとるとき,〈移動距離〉が面積の形で現われる: