Up おわりに──これ以降の勉強の方向 作成: 2007-05-06
更新: 2007-05-06


    本テキストは,数の意味が「量の比」であることを読者に理解してもらう目的で書いています。
    したがって,これの理解にとって「雑音」になることをできるだけ排除するように書きました。 特に,論理の厳格性の点で「適当に逃げて」いるところもあります。 (それでもけっこうな長さのテキストになっていますが。)

    本テキストでは,量を扱うために人が数をつくったと述べています。
    しかし,数をつくった当人がこの意識で数をつくったかどうかは,別問題です。 数の成り立ちは,個別的に数学史の内容になります。

    本テキストでは数はひとのつくった道具,すなわち人為ですが,数を人為以前の存在として考える立場が一方にあります。この場合,「人は数を発見するに過ぎない」ということになります。 この考え方は,イデア論を源にもつ西洋哲学ではいまでもむしろ主流かも知れません (「実在論」と呼ばれます)。

    本テキストでは,「数」の意味を「自然数,分数,正負の数,複素数,‥‥に通底する形式」として述べています。
    このとき,この形式の内容に直接関係しないものを「雑音」として捨てているわけですが,この捨てられたものの一つに自然数の話があります。
    数は,既存の数を素材にしてつくられます。 したがって,数の構成を遡れば,どこかで「ゼロからの数の構築」がなければなりません。 これが自然数の場合です。
    よって,自然数の話は,「ゼロからの数の構築」の内容が主になります。さらに,自然数特有の用途が,内容に加わります。
    これらの内容については,『学校数学の数学がわかる本──数量編』にあたってください。

    数学では,「数の構築」の主題で,自然数,整数,有理数,実数,複素数,‥‥ の構築を論じます。 ここには,量は現れません。
    「量」は,数の意味論が必要とするものです。 結果を先取りすれば,「量」無しで (意味抜きで) 数を構成できます。
    数学の方法論にはひとつに「純粋形式言語たらん」というのがあり,「数の構築」はこの立場で論述されます。
    ただしこのときには,構築している当のものがどんな資格/条件から「数」と呼ばれるのかは,述べられません。 「それを考えるのは読者の仕事」ということになってしまうわけです。

    読者は,このことを念頭においた上で,数学の「数の構築」が実際どんなふうになっているか,一度見てみるとよいでしょう。
    また,数学専門課程の学生ならば,この「数の構築」を学習することで,数学の基礎である「論理・集合」の基本的な考え/手法を勉強することができます。