Up はじめに 作成: 2008-12-09
更新: 2008-12-09


    本論考は,四元数が
      自然数 → 分数 → 正負の数 → 複素数
    という「数」の構築の流れの中にどのように位置づくかを,解説しようとするものです。

    数は,「量の比」の表現に使われるべく,つくられます。
    対象にしたい量が違えば,数も違ってきます。
    食材が違えば包丁も違ってくるのと,同じです。

    正負の数は,対象にしたい量が「正逆2方向の大きさ」であるときに導かれてきます。

    「正逆2方向の大きさ」は,「直線上方向自由な移動」が数学的モデルになります。
    このモデルを「次元を増やす」方向に延長すると,「平面上方向自由な移動」が出てきます。 そして,「平面上方向自由な移動」を量にしようとするとき,対応する数として複素数が導かれてきます。

    この延長をさらに進めると,つぎが主題になります:
      「3次元空間内方向自由な移動」を量としたときの,
       これに対応する数を導く。

    これに数学者ハミルトンが取り組みました。
    そして,つぎのことを得ました:
      「3次元空間内方向自由な移動」を量とする数は,つくれない。
      「4次元空間内方向自由な移動」を量とする数は,つくれる。
    「4次元空間内方向自由な移動」を量とする数として導いたのが,「四元数」です。

    3次元空間内方向自由な移動は,4次元空間内方向自由な移動に埋め込めます。 そしてこの状態で,四元数を適用できるものになります。
    これが,四元数の実際応用性の構造です。

    四元数を知識としてもっていることは,数学教育的にも意味があります。
    数学教育論として「数」を論じているものの多くは,自然数で「数」を考えています。 よって,没論理をやってしまい,しかし自分ではそのことに気づきません。
    このとき,「数」の意味を
      自然数 → 分数 → 正負の数 → 複素数 → 四元数
    の流れで押さえるようにすると,嫌でも没論理は自己訂正されていきます。