- 実数の導入は,論理的・存在論的に微妙なテーマです。
例えば,つぎのような論法は妥当でしょうか?
すべての比を表現する数を「実数」と呼ぼう。
正方形の1辺と対角線の長さの比が整数比 (分数/有理数) にならないように,この数には有理数でないものがある。それを「無理数」と呼ぼう。
この論法では,実数の存在は,量の比の存在に依存していることになります。また,「正方形の1辺と対角線の長さの比は整数比にならない」は「ユークリッドの定理 (3平方の定理)」に依存していますが ( √2),この定理の証明は等積変形に依存しています。しかし,このときの「依存先の遡及」は,より確しからしいものへの収れんになっているのでしょうか?
- このようなやっかいな問題をやり過ごすために,数学はここでも「数の系の拡張」というやり方をとります。
その方法ですが,Cauchy 列を用いるものと,Dedekind 切断を用いるものがあります。
それぞれをきちん述べると「実数論」という大部の内容になりますから,ここではアイデアだけ簡単に示すことにします:
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