0.6 本論考の位置づけ
数を存在として自立させる指導は,“現行”から外れます。“現行”の改良のように行なえることではありません。それは,はじめに述べた“新幹線”の戦略によって実現されるしかありません。そして先ずは,現行の数の指導体系に別の指導体系を並べることから始まります。──強調しておきますが,並置であって対置ではありません。
この作業は,“数”の主題に対するわたしたちの共通認識から出発しているのでなければ無効になります。“新幹線”の導入とは,主題に対する別の認識の対置ではなく,主題の共通認識に立つところの別の指導体系の並置です。
本稿は,このような認識に立って,“数”とはどのような主題であるかを予め明らかにしておこうするものです(註)。
したがって,わたしがここで求めようとするものは“周知の確認”です。新しい指導体系の提案は,ひとが周知として了承するところから始めねばなりません。そしてこの了承を得て,つぎに数の新しい指導体系を問う段になります。《主題の直接性を回復し生成的な理解を実現する》数指導を将来的に見込み,前作業として“数/量”主題の“何”を明らかにしておくこと,これが本稿の位置づけです。
(註) ここで詳らかにしようとする“数/量”の主題の内容は,陰に陽にすべて学校数学の中に含まれています──わたしは“すべて”という点を強調したい。学校数学が数学と別ということはありません。学校数学は,算数の段階から既に優れて数学です。