2.6.1 “数/量の命名”



 数/量の名の系は,また数/量の系である。実際,それはもとの数/量の系と同型でなければならず,そして数/量の系と同型なものは再び数/量の系である。

 したがって,“数/量の命名”とは,数/量の系に別の数/量の系を同型に対応させることに他ならない(註1)。即ち,一つの数/量の系を同型な別の数/量の系に替える(註2)ということでしかない。

 よって,“数/量の命名”という言い回しは,数/量の実在論に立っているか,数/量の系が既に対象化されている場合にのみ意味をもつ。実在論を退けているわれわれの立場では,“数/量の命名”とは既に対象化されている数/量の系を同型な別の数/量の系に替えることである。



(註1) 特に,一つの数/量の系は,それ自身の名の系と見なせる。

(註2) 例えば自然数の系の場合,ローマ数字をアラビア数字に直すとか,10進数を 16進数に直すなど。
 また,既存の数に簡便な名を与える(このとき新たに数の系が実現されることになるのは,あくまでも結果であり,意図のうちにはない)など。