4.1.2 比の導出のモデル
比の表現“自然数:自然数”では,同じ比に対して異なる表現が可能である。しかし同時に,
《m:nとm′:n′が同じ比の表現であるためには,m×n′=m′×n であること,あるいは同じこととして(註),自然数a,b,k,k′でm=k×a,n=k×b,m′=k′×a,n′=k′×bとなるものが存在することが,必要十分》
のきまりがある。
“比”の定式化は,この
“先ず《比》,そして《比を表現する自然数の対》,さらに《同じ比を表現する自然数の対の間に成立するきまり》”
の順序を逆立ちさせる。即ち,《同値な表現のきまり》で自然数の対を類別し,このときの類全体の集合として“比の集合”R を定義する。
(註) (1) m=k×a,n=k×b,m′=k′×a,n′=k′×bのとき,m×n′=(k×a)×(k′×b)=(k′×a)×(k×b)=m′×n。
(2) 逆に,m×n′=m′×n のとき,mとnの最大公約数kと,m′とn′の最大公約数k′に対し,m=k×a,n=k×b,m′=k′×a′,n′=k′×b′とすれば,k×k′×a×b′=m×n′=m′×n=k×k′×a′×b。これより,a×b′=a′×b。aとbが互いに素だから,bはb′の約数。また,a′とb′が互いに素だから,b′はbの約数。よってb=b′,さらにこれからa=a′。