9.1 量の派生
《既成の量からの新しい量の導出》という形で解釈できる量がある。このような量は,“派生的”であると言うことができる。
すべての量を派生的な量として記述することは,当然できない──それは循環論法になる。或る量が,派生的な量としては記述されない量(“定義されない量")として残ることになる。このような量を“基本的”と称することにしよう。
或る量が基本的か否かは,ひとの定めるところである。ひとは,任意に,或る量を基本的であるとすることができる。但し,現実には,《扱い易さ》ということから,ケ−ス・バイ・ケ−スで或る一定の決め方に落ち着く。例えば,日常生活での“長さ",“重さ",“時間”の扱い方は,基本的な量としてであり,“かさ(容積)",“面積",“体積",“速さ”の扱い方は,派生的な量としてである。
基本的な量の違いは,結局のところ,はかりの違いである。基本的な量は,はかりの上の事態として,操作的に定義される。基本的な量の色々は,操作的定義の色々である。
これに対し,派生的な量の違いは,基本的な量からの導出法の違いである。派生的な量の色々は,〈もとになる基本的量と,それからの導出の仕方〉の色々である。