「正負の数」への数の拡張は,「差の系の導出」です。
既存の数の系から新しい数の系を導くことは,すでに小学校算数でもやっています。指導の上で明示することはありませんが,分数は自然数から導き出したものです。
ただ,自然数から分数を導く方法は,「比の系の導出」です。
「比の系の導出」はこんなふうでした:
比の表現「n:m」で同値になる数のペア全体を,新しい一つの数と考える
例えば,
(2,3), (4,6), (6,9), (8,12), ‥‥‥‥
の各々は互いに同じ比の表現をつくる自然数のペアですが,これら全部のひとくくりを一つの数(分数)としたわけです。
この数は (2,3), (4,6), (6,9), (8,12), ‥‥‥‥ のうちの一つを使って,例えば (6,9) を使って「9/6」と表現されました。
一方,「差の系の導出」はこんなぐあいです:
差の表現「n−m」で同値になる数のペア全体を,新しい一つの数と考える
例えば,
(1,4), (2,5), (3,6), (4,7), ‥‥‥‥
の各々は互いに同じ差の表現をつくる自然数のペアですが,これら全部のひとくくりを一つの数(整数)とします。
この整数は (1,4), (2,5), (3,6), (4,7), ‥‥‥‥ のうちの一つを使って,例えば (2,5) を使って「5−2」と表現してもいいのですが,
2+x=5
となる自然数x,すなわち3,を使って「3」と表現できます。
ところで,上の各ペアの前後を逆にした
(4,1), (5,2), (6,3), (7,4), ‥‥‥‥
も同じ差の表現をつくる自然数のペアですから,これらひとくくりが一つの整数になります。ただ, (5,2) に注目した場合,
5+x=2
となる自然数xは存在しません。かわりに,
5=2+x
となる自然数x,やはり3,が存在します。そこで,先の「3」と区別するために表現「−3」を導入します。そして「3」の方は改めて「+3」と表現することにします。
「+・−」を使うこの記数法では,「二つの差は互いに逆」という意識がはたらいています。