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線型写像の概念
“線型写像”は,“比例関数”の概念の拡張です。
比例関数は,
K
が実数体
あるいは有理数体
であるときの1次元線型空間(
D
,
K
),(
D
',
K
)に対する関数
f
:
D
─→
D
'で,条件:
f
(
x
×
ξ)=
f
(
x
)
×
ξ
(註1)
を満たすもの,というように定式化できます。実際,比例関数が量と量の間で考えられているとき,量は実数体あるいは有理数体上の1次元線型空間として効いています。 また,比例関数が実数と実数,あるいは有理数と有理数の間で考えられているとき,実数は (1次元)線型空間としての((
,+),(
,+,×),×)の第1因子の方の
の要素として,同様に有理数は (1次元)線型空間としての((
,+),(
,+,×),×)の第1因子の方の
の要素として,それぞれ実効している
(註2)
。
“比例関数”の“線型写像”への拡張は,係数体および次元の一般化です。 そして,“線型写像”へと引き継ぐものは,比例関数の形式としての
f
(
x
×
ξ)=
f
(
x
)
×
ξ
と,比例関数の価値としての
《単位の写る先がわかれば全ての要素の写る先がわかる》
です。
次元の一般化で,“単位”は“基底”の概念へと拡張されます。そこで,価値の方は,
《基底の要素の写る先がわかれば全ての要素の写る先がわかる》
のようになります。しかしこの価値の実現のためには,形式
f
(
x
×
ξ)=
f
(
x
)
×
ξ
だけでは足りません。この事態は,形式
f
(
x
+
y
)=
f
(
x
)+
f
(
y
)
を加えることで解決されます。
注意:
この条件の追加は,比例関数から“線型写像”への自然な拡張を損なうものではありません。実際,比例関数の場合,“
f
(
x
+
y
)=
f
(
x
)+
f
(
y
)”は“
f
(
x
×
ξ)=
f
(
x
)
×
ξ”の含意になっています
(註2)
。
こうして,“比例関数”の拡張としての“線型写像”は,条件
f
(
x
×
ξ)=
f
(
x
)
×
ξ
f
(
x
+
y
)=
f
(
x
)+
f
(
y
)
を満たす写像
f
:
D
─→
D
'として定義されることになります。
(註1) 小学校算数では,これを“一方が2倍,3倍,・・・・になるときもう一方も2倍,3倍,・・・・になる”という言い回しで指導しています。
(註2) 一般に,体(
K
,+,×)からは,1次元線型空間((
K
,+),(
K
,+,×),×)が導かれる。──体(
K
,+,×)から群(
K
,+)を分離し,乗法×によって群(
K
,+)の要素に対する体(
K
,+,×)の要素の作用を定義します。
(註3)
x
=
u
×
ξ,
y
=
u
×
ηとすると,
f
(
x
+
y
)=
f
(
u
×
(ξ+η))
=
f
(
u
)
×
(ξ+η)
=
f
(
u
)
×
ξ+
f
(
u
)
×
η
=
f
(
u
×
ξ)+
f
(
u
×
η)
=
f
(
x
)+
f
(
y
)