Up | 序 | 作成: 2010-11-24 更新: 2011-02-16 |
「数学を勉強して何の役に立つ?」の問いに対して数学教育学の側から答えを示しているものは,出口論であり,とりわけ出口論主流である。 出口論主流は,一つものがずっと続くというのではなく,ライフサイクルをもっていて,それを終える形で新しい出口論主流に替わられる。 ただし出口論主流には同型が認められ,この意味で,出口論主流の交替は同じ出口論の<繰り返し>である。 出口論主流は,同型の繰り返しの意味を,数学教育学パラダイムのあり方として顕す。 現在の出口論主流は,「数学的リテラシー」である。 これの前が「数学的問題解決」であり,さらにその前が「数学的考え方」である。 「数学的リテラシー」は「数学的問題解決」を直近にしていることで,自らの領域確定で困難を示している。 そして,この「領域確定の困難」の問題は,<数学を>に対する<数学で>の領域画定という一般的問題に溯行する。 さらに,<数学を>に対する<数学で>の領域画定の問題は,<数学を>の出口の問題に溯行する。 <数学を>の出口の論考は難しい。難しいので,思考停止で終わる。出口論が<数学で>になってしまうのも,<数学で>なら出口論をつくれるということが,いちばんの理由である。 本テクストは,「数学を勉強して何の役に立つ?」の問いをおおもとに据え,上に述べた問題連関を展望するところから,「数学的リテラシー」とはどういう問題かを論考しようとするものである。 本論考は,「数学的リテラシー」を主題化する方法論において,現前の「数学的リテラシー」論とはまったく違ったものになっている。 現前の「数学的リテラシー」論は,「数学的リテラシー」を最初から学校数学の達成課題として立てることをスタイルにしている。達成課題として立ててから,これが何であるかを考えるふうになっている。 これに対し,本論考は,「数学的リテラシー」のムーブメントの意味を同定しようとする。<同型>の歴史的繰り返しをこれに見ていく。 本テクストは小論であるが,期するところは,このムーブメントの生起を必然のものにしている構造・力学へと論考が進んでいくことである。 |