理論的方法の例として,「特殊から一般へ」をここで取り上げる。
「特殊から一般へ」はつぎのように解釈するよい:
1. |
まず,ひとは「特殊から一般へ」のようにしか学習できない。 |
「一般化」は趣味の問題ではない。
教科を道具として有効にするための方法の一つ。
ただ,この形の道具のありがたみは,上級者にしかわからない。
一般形は,初級者にはノイズにしか感じられない。
このノイズがヴィヴイッドなリアルとなり,これの射程,理由,そしてよさがわかるためには,多くの経験をつむ必要がある。
どのような「経験」か?「特殊から一般へ」しかない。
2. |
つぎに,学習は,生成的に理解する(「少しを知って,その都度必要なものを生成する」)という形でしか,成功しない。
「ものをためこむ」形の学習(「記憶学習」)は早晩破綻する。
そしてこのときの「少し」は,「生成的な特殊」。
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- 例えば,「線型代数」を理解するには,「量」を「特殊」としてもっていれば十分。
高校数学の「線型代数」のすべてのネタは小学算数の「量と数」の中にある。
- 誤解はないと思いうが,念のため:「少し」のイメージは「公理」ではない。
形の意味と応用は,相応じて,一般化 (拡張) されていく。
このとき,形のひとつのイメージにしばられていると,その形のより高い段階の学習へ進めなくなる。
「特殊から一般へ」の学習は,簡単ではない。
「特殊」に対する理解が柔軟でなければ「特殊から一般へ」は進めないが,ひとは「特殊」にフィックスしてしまう。
ここに,指導者の能力,指導者の存在理由,が問われてくる。
例:
- 自然数の学習では,数の商(除法)の応用として「分ける」を習う。
しかし,この「÷」=「分ける」のイメージにとらわれると,分数の商(除法)の学習に進めなくなる。
- 多くの高校生が,意味不明のまま「行列」を学習している。つぎのことを知らずに学習している:
- 「行列」は,次元の拡張(1から2への拡張)にともなう「比例定数」の意味拡張。
- 「2次元ベクトル空間」は,小学校で習った「量」の拡張。
- x-y 座標は,「ものさし」の拡張。
- 「1次変換」は「比例関数」の拡張。
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