- 「論証」の概念の,本来的難しさ
──「論証」を初めて学ぶ者は,「論証」の形式に戸惑う:
いったいこれはどんなゲームなのか?
どんなときに行うゲームなのか?
自分の「論証」は,はたして論証になっているのか?
- 「論証」が起こる要件
──「命題の論証」は,場面の意味や主体の意識・動機の点で,
「与えられた問題を,正しく推理/推論して解く」とは違う。
- 論証の必要性
- 説明・説得しなければならない相手がいる。
- 自らが納得する必要がある。
- 論証したい・しなければならないと思う命題が,論証の対象になる。
それはつぎのような命題である:
- 基本的,重要,使用価値が高い
- いろいろな場合で成り立つので,一般的になり立つのではないか?(なりたって欲しい) と思わせるもの
- シンプル・美しい
- 「論証」の指導の構成/内容
──「論証」の指導は,つぎの指導で成る:
- 「論証」の意味
- 「論証」の方法論
- 「論証」のフォーム
- 論証の練習 (論証を身につける)
- 「論証」の意味
──「論証」の意味を,最初に理解させる。
これができていなければ,「論証」の指導には入れない。
- 確実性を得るために,「論証」ゲームを導入する:
- 自分を論難しようとする者が,相手。
論証は,相手の論難を退けるゲーム。
- 自分自身が,「自分を論難しようとする者」になる。
- 論証とは,厳格性・明証性によって,結論に導く自分の推論を相手に認めさせること。
これは,つぎの2つでなる:
- 推論の出発点 (与件/命題/公理) を認めさせる。
- 推論を認めさせる。
- 「論証」ゲームをやってみる
- 複数で,つぎの役割ゲームを行う:
A : |
命題が「成り立つ」ことを述べる |
B : |
「成り立つ」に「なぜ?」を問う。 |
A : |
「なぜ?」に対して,既に「成り立つ」がわかっていることを使って理由づける。 |
B : |
理由づけに使われた「成り立つ」に対して「なぜ?」があるときは,その「なぜ?」を問う。 |
(これの繰り返し) |
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- 自分ひとりで,A, B の役割をやってみる。
- 「なぜ?」が問われるときの<疑い>に,2タイプある:
- 特殊から一般に,飛躍しているのでは?
- 説明に使っている根拠も,疑わしいのでは?
この<疑い>に答える形は:
- 「特殊から一般に飛躍」の疑いに対しては,「一般表現」を用いる:
- 「説明の根拠」への疑いに対しては,<根拠>の遡行を行う。
そして,<根拠>の遡行が終わったところで,遡行の順序を逆転させ,起点とする命題から「だから」で降っていく。
註 : |
「理由づけ」では,つぎの推論規則 (「三段論法」) が用いられていることになる:
( P and (P ⇒ Q) ) ⇒ Q
(読み方: P が真で,さらに P ⇒ Q が真ならば,Q は真 )
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- 「論証」のフォーム
── |
従来中学数学で教えられていた「仮定・証明・結論」のフォームは,学習者を混乱させる。証明しようとする命題の文言 (これには,仮定と結論が既に述べられている) との重複が生じるからである。
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「論証」フォームの指導は,つぎの内容で行う:
- 課題として提示された命題に対し,与条件 (仮定) と結論を確認する。
- 与条件 (仮定) と結論がわかりやすいように,命題を自分なりに整理して書く。
- 行をかえて,「証明」と書く。
- 行をかえて,「与条件から結論への推理」として,証明を書く。
- 「論証」の練習
──「論証」フォームを身につけさせる。
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