「数と量」の指導内容 (学習主題の進行) は,以下のようになる。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥
- 「個数を数える」「個数を表す」ものとして,「1, 2, 3, ‥‥」を導入する。
- 「1, 2, 3, ‥‥」の数学の意味は,「十進の規則で表記された自然数」。
- 十進表記 (「位」) のきまり
- 「個数」に対する<個のいくつ分>のとらえ
- これは,つぎの数学を暗黙に行っていることになる:
量の集合 Q,Qの要素q,u,自然数nに対するつぎの等式を立てる:
ここで「×」は,量に対する数の倍作用。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の和
- 「個数の和」の表記に用いる式として,十進数 1, 2, 3, ‥‥ の和の式を導入する。
- これは,つぎの数学を暗黙に行っていることになる:
量の集合 Q,Qの要素u,自然数m,nに対するつぎの等式を立てる:
ここで「+」(太字の+) は,量の和。
- 現行の学校数学は<数は量の抽象>の立場なので,この数学を見ない。
すなわち,数の和を個数の和そのものと見る。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の和の計算
- 個数の和の求め方を問題にする。
- 1桁の数同士の和は,覚えてしまう。 (「足し算九九」)
- 和一般を,足し算九九と「位」の処理 (特に「繰り上がり」) の組合せで求める。
結果を,「足し算の筆算のきまり」に整理する。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の和の文章問題
- 数学の言い方を用いると,これは形式「u × m + u × n」(u:量;m,n:自然数) を導かせる問題。
この形式が導かれたら,「u × m + u × n= u × (m+n)」により,m+nの計算になる。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の差
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の差の式を導入する。
- これは,つぎの数学を暗黙に行っていることになる:
量の集合 Q,Qの要素u,自然数m,nに対するつぎの等式を立てる:
u × m + u × (nーm) = u × n
- 現行の学校数学は<数は量の抽象>の立場なので,この数学を見ない。
すなわち,自然数の差を個数の差そのものと見る。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の差の計算
- 個数の差の求め方を問題にする。
- 10と1桁の数の差は,覚えてしまう。
- 差一般を,「位」の処理 (特に「繰り下がり」) と<10と1桁の数の差>の組合せで求める。
結果を,「引き算の筆算のきまり」に整理する。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の差の文章問題
- 数学の言い方を用いると,これは形式「u × m + u × (nーm) = u × n」(u:量;m,n:自然数) を導かせ,nーm を計算させる問題。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の積
- 「個数の累加」の表記に用いる式として,十進数 1, 2, 3, ‥‥ の積の式を導入する。
- これは,つぎの数学を暗黙に行っていることになる:
量の集合 Q,Qの要素u,自然数m,nに対するつぎの等式を立てる:
- 現行の学校数学は<数は量の抽象>の立場なので,この数学を見ない。
すなわち,自然数の積を「(ひとかたまりいくつ)×(かたまりいくつ)」と見る。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の積の計算
- 「個数の累加」の求め方を問題にする。
- 1桁の数同士の積は,覚えてしまう (「かけ算九九」)
- 一般の積を,かけ算九九と足し算と「位」の処理の組合せで求める。
結果を,「かけ算の筆算のきまり」に整理する。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の積の文章問題
- 数学の言い方を用いると,これは形式「(u × m) × n」(u:量;m,n:自然数) を導かせる問題。
この形式が導かれたら,「(u × m) × n= u × (m×n)」により,m×nの計算になる。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の商
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の商の式を導入する。
- これは,つぎの数学を暗黙に行っていることになる:
量の集合 Q,Qの要素u,自然数m,nに対するつぎの等式を立てる:
- 現行の学校数学は<数は量の抽象>の立場なので,この数学を見ない。
すなわち,自然数の商を「個数の等分」あるいは「個数の包含」と見る。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の商の計算
- 商一般を,「位」の処理 (特に「繰り下がり」),かけ算,引き算の組合せで求める。
結果を,「割り算の筆算のきまり」に整理する。
- 十進数 1, 2, 3, ‥‥ の商の文章問題
- 数学の言い方を用いると,これは形式「(u × m) × (n ÷ m)= u × n」(u:量;m,n:自然数) を導かせ,n ÷ m を計算させる問題。
- 「はしたの量」から分数の導入へ
- 視覚的な大きさの長さ,面積,体積を用いて,「はしたの量」を対象化する。
- これの数学は,「大きさの順序が稠密な量」の主題化である。
- 「はしたの量」の表現
- 表現形式:「もとにする量のどれだけ」
- 「どれだけ」に,「いくつ」(自然数) は使えない。
- 自然数の対を用いて,「どれだけ」を表現する。
この自然数の対を,「分数」と呼ぶ。
- この「分数」は,まだ数学の分数 (自然数対の同値類) にはなっていない。
- 「どれだけ」のことばが,「比・倍」になる。
- 「はしたの量」表現での分数使用の数学は,つぎのものである:
量の集合 Q,Qの要素q,u,分数n に対するつぎの等式を立てる:
- 同じ分数を表す自然数対
- 同じ比/倍が異なる自然数対 (「分数」) で表現されることを,主題化。
- 同じ分数のきまりを求める。
- 求まったきまりを,「約分 (倍分)」の公式として立てる。
- m/n=p/q に対し「同分母にしたとき分子が等しい」あるいは「同分子にしたとき分母が等しい」を式に表すということをやれば,つぎの「同じ分数のきまり」に至る:m×q=n×p。
- 自然数の分数への埋め込み
- 自然数倍nは,分数倍n/1と,構造が同じになる。
このことを以て,数学は「自然数の分数への埋め込み n → n/1」の概念を立てる。
また,これを「自然数の拡張としての分数」と読む。
- 現行の学校数学は,この主題の扱いを曖昧なふうにしている。
但し,この扱いは「教育的方便」として首肯される。
- 分数の和
- 「量の和」の表記に用いる式として,分数の和の式を導入する。
- これは,つぎの数学を暗黙に行っていることになる:
量の集合 Q,Qの要素u,分数m,nに対するつぎの等式を立てる:
- 現行の学校数学は<数は量の抽象>の立場なので,この数学を見ない。
すなわち,分数の和を量の和そのものと見る。
そして,単位記号は,量を指す記号ではなく,何の量を扱っているかがわかるようにするための記号である。
- 分数の和の計算
- 量の和の求め方を問題にする。
- 量の和の求める過程で分数の式変形がどうなっているかを捉え,これを「分数の和の公式」にする。
- 分数の求和は,つぎの2通りがある:
- 直接計算。
- 同分母分数の和の公式を最初に立て,異分母分数の和を「(1) 同分母分数に変形,(2) 同分母分数の和の公式を適用」の2段階で計算。
- 分数の和の文章問題
- 数学の言い方を用いると,これは形式「u × m + u × n」(u:量;m,n:分数) を導かせる問題。
この形式が導かれたら,「u × m + u × n= u × (m+n)」により,m+nの計算になる。
- 分数の差
- 分数の差の式を導入する。
- これは,つぎの数学を暗黙に行っていることになる:
量の集合 Q,Qの要素u,分数m,nに対するつぎの等式を立てる:
u × m + u × (nーm) = u × n
- 現行の学校数学は<数は量の抽象>の立場なので,この数学を見ない。
すなわち,分数の差を量の差そのものと見る。
- 分数の差の計算
- 量の差の求め方を問題にする。
- 量の差の求める過程で分数の式変形がどうなっているかを捉え,これを「分数の差の公式」にする。
- 分数の差の文章問題
- 数学の言い方を用いると,これは形式「u × m + u × (nーm) = u × n」(u:量;m,n:分数) を導かせ,nーm を計算させる問題。
- 分数の積
- 「量の倍の倍」の表記に用いる式として,分数の積の式を導入する。
- これは,つぎの数学を暗黙に行っていることになる:
量の集合 Q,Qの要素u,分数m,nに対するつぎの等式を立てる:
- 現行の学校数学は<数は量の抽象>の立場なので,この数学を見ない。
すなわち,分数の積を「(1あたり量)×(量)」と見る。
- 分数の積の計算
- 量の倍の倍の求め方を問題にする。
- 量の倍の倍を求める過程で分数の式変形がどうなっているかを捉え,これを「分数の積の公式」にする。
- 「同分母分数の和の公式」には,つぎの式が対応する:
- 現行の学校数学は,「分数×整数」「整数×分数」を経て「分数×分数」をやる。
数学では,この構成は循環論法をやっていることになる。なぜなら,このときの「整数」は,「自然数の分数への埋め込み」になるものだからである。
- 分数の積の文章問題
- 数学の言い方を用いると,これは形式「(u × m) × n」(u:量;m,n:分数) を導かせる問題。
この形式が導かれたら,「(u × m) × n= u × (m×n)」により,m×nの計算になる。
- 分数の商
- 分数の商の式を導入する。
- これは,つぎの数学を暗黙に行っていることになる:
量の集合 Q,Qの要素u,分数m,nに対するつぎの等式を立てる:
- 現行の学校数学は<数は量の抽象>の立場なので,この数学を見ない。
すなわち,分数の商を「1あたり量」あるいは「量の包含」と見る。
- 分数の商の計算
- 現行の学校数学は<数は量の抽象>の立場なので,「1あたり量」あるいは「量の包含」を求める計算として,分数の求商計算を主題にする。
そしてこれを求める過程で分数の式変形がどうなっているかを捉え,これを「分数の割り算の公式」にする。
- 分数の商の文章問題
- 数学の言い方を用いると,これは形式「(u × m) × (n ÷ m)= u × n」(u:量;m,n:分数) を導かせ,n ÷ m を計算させる問題。
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