Up 求商公式の指導 作成: 2011-08-03
更新: 2011-08-23


主題研究:分数の求商公式

    ここでは,<数は量の比>を立場とするときの「分数の割り算」の指導法を示す。

    1. 学習内容のアナウンス

        本時は,「分数の割り算」を勉強します。
        「割り算」のことばは,知っています。
        分数は,これまでやってきました。
        「分数の割り算」をそのまま書けば :「2/3÷5/4」
        「2/3÷5/4」の (1) 意味と (2) 計算の仕方を勉強します。


    2. 「2/3÷5/4」の意味の学習

        「÷」の使い方を確認しましょう。
        「12×□=276」「□×12=276」の□を求める式を,「276÷12」と書きました。
        これが「÷」の使い方です。
        (要件:記号「÷」のこの意味が既習)
        練習
        • 5×□=35,□×5=35 → 35÷5
        • 35÷5 → 5×□=35,□×5=35

        「2/3÷5/4」の意味は,どうなるでしょう?
        5/4×□=2/3,□×5/4=2/3 の□が 2/3÷5/4,ということになりますね。
        練習


    3. 「2/3÷5/4」の計算のきまりを覚える

        計算の仕方を自力で見つけるのは,実は難しいです。
         ( 分数の求商公式の導き方)
        そこで,計算の仕方 (こたえ) を先に教えちゃいますね:
          2/3÷5/4=2/3×4/5 (「ひっくり返して掛ける」)

        言い回しを覚えましょう:
          「分数の割り算は,割る方の分数をひっくり返して掛ける」

        練習


    4. 「ひっくり返して掛ける」が確かにきまりになることの確認

      1. 5/4×□=2/3,□×5/4=2/3 の□が,2/3÷5/4。
        2/3÷5/4 は 2/3×4/5 だと言いました。
        2/3×4/5 を□に入れて,本当に等式が成り立つかな?

      2. □×5/4=2/3 の□に 2/3×4/5 を入れてみましょう。
        2/3×4/5×5/4=2/3 の式になりました。
        左辺に3つの分数が並んでいます。
        この意味は何でしょう?

      3. 2×3×4の意味は何だったでしょう?
        この意味は,「2倍して3倍して4倍」。
        2倍して3倍して4倍は12倍だから,2×3×4=12。
        (要件:記号「×」のこの意味が既習)

         注意 : 学校数学は,数の積を<倍の合成>として指導しないことになっている。 すなわち,「数は量の抽象」の立場から,数の積を「単位当たり量 × いくつ分」で教えている。 これだと,2×3×4 の解釈につぎのように窮することになるのだが,この不都合については目をつむるふうになっている。

            2   ×   3   ×   4  
          単位当たり量 いくつ分

        分数も同様です。
        2/3×4/5×5/4 の意味は,「2/3倍して4/5倍して5/4倍」。
        これは,言い換えると,「<3等分して2つ>をして,<5等分して4つ>をして,<4等分して5つ>をする」。
        そして,2/3×4/5×5/4=2/3 ということは,これが<3等分して2つ>になるということ。
        ほんとうにこうなっているかな?

        図でやってみよう。


        4/5×5/4 のところに注目しよう。
        <5等分して4つ>をしてつぎに<4等分して5つ>をすると?
        元に戻る。
        つまり,変わらない。
        (要件:「分数倍の逆倍」が既習)
        2/3×4/5×5/4 から 4/5×5/4 が無くなるから, 2/3 が残る。
        ということで,2/3×4/5×5/4 は,2/3。

      4. 5/4×□=2/3 の方は,どうだろうか?
        5/4×□=2/3 の□に 2/3×4/5 を入れてみる。
        ただし,今度は 2/3×4/5 のかわりに 4/5×2/3 を入れると,うまくいきます。
        (要件 :「積の可換性」が既習)

        5/4×4/5×2/3=2/3 の式になりました。
        5/4×4/5×2/3 の意味は,<4等分して5つ>をして,<5等分して4つ>をして,<3等分して2つ>をする。

        図でやってみよう。


        5/4×4/5 はどうなる?
        <4等分して5つ>をして,つぎに<5等分して4つ>をすると?
        変わらない。
        5/4×4/5×2/3 から 5/4×4/5 が無くなるから, 2/3 が残る。
        ということで,5/4×4/5×2/3 は,2/3。


    5. 練習


    6. 本時の学習内容の確認
      1. 5/4×□=2/3,□×5/4=2/3 の□が,2/3÷5/4。
      2. 「分数の割り算は,割る方の分数をひっくり返して掛ける」
          2/3 ÷ 5/4 = 2/3 × 4/5


    現行の指導法は,<数は量の抽象>が立場である。 ただし,実際には<数は量の比>を都合よく混用している。
     分数の割り算を,ここでは包含除で教えることにする」という言い回しに出会うことがあるが,「<数は量の比>を都合よく混用」の典型的な例がこれである。

    数学は,<数は量の比>である
    本指導法は,この数学を直接指導するものなので,「一般的」で「シンプル」になる。 そのかわり「難しい」(?)。
    現行の指導法は,数学を外しているので,「特殊な場面設定が必要」で「複雑」になる。 そのかわり「易しい」(?)。

    さて,現行の指導法は「数学の教育的方便」として十分に割の合うものなのかどうか?
    ここは読者自らが判断されたい。