「ペンキ塗り」型の「分数のわり算」の授業は,つぎの流れになる:
- つぎの文章題から始める:
「塀にペンキを塗る。
4/5 dL で 2/3 m2 塗れる。
1 dL では 何 m2 塗れるか?」
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- この問題がつぎの問題に還元されることを,生徒に受け入れさせる:
「2/3 m2 は,何 m2 の 4/5 倍か?」
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- つぎの立式を,生徒に受け入れさせる:
- 面積が m2 の長方形 (特に,m四方の正方形) を表す図を描く。
- 「2/3 m2 は,何 m2 の 4/5 倍」を,つぎのように作図する:
- この図から,つぎの関係を読み取らせる:
(#) 「何 m2」=「m2 の (2 × 5)/(3 × 4)」
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- (*) と (#) から,つぎを結論する:
2/3 ÷ 4/5 = (2 × 5)/(3 × 4)
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- (2 × 5)/(3 × 4) = 2/3 × 5/4 であることから,つぎを結論する:
- つぎのことばにまとめる:
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「分数のわり算は,
割られる方の分数に,割る方の分数をひっくり返してかける。」
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以上の手順を<数学の推論>として採点するならば,つぎの2つが減点される:
- ステップ2 および 3 において,論証がない。
- ペンキ塗りの問題で得た式 (特殊) から,分数の求積公式 (一般) を結論する。
なお,ステップ2,3で抜かされている論証は,つぎのようになる:
ところで,上の文章題は,「分数のわり算」の文章題に2タイプあるうちの,一方のタイプのものである。
つぎが,もう一つのタイプである:
「塀にペンキを塗る。
1 dL で4/5 m2 塗れる。
何 dL で 2/3 m2 塗れるか?」
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「比の3用法」の言い方を用いるならば,最初の文章題は「比の第3用法」タイプ,そしていま示した文章題は「比の第1用法」タイプである。
そして,「比の第1用法」タイプの場合,長方形を分割するやり方は,使えない。
よって,「分数のわり算の立式・計算」を「ペンキ塗り」型で授業するときは,《文章題に「比の第1用法」タイプがあることを,生徒に対し隠す》を確信犯的にやることになる。
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