「数直線」の授業設計は,どういうことを考え,そしてどのように進めるか?
以下は一つの例です。
- 主題をとらえる
「正負の数」の単元における「数直線」の授業設計は,「数直線」の意味をとらえることから始まります。
一般に,主題の意味を正しくとらえることは,ひじょうに困難です。
深く考えると同時に,変てこな考え方に陥っていないかを警戒することが必要です。
(よく知らないことを深く考えると,たいてい変てこな考え方に陥ります。)
「数直線」の意味は,つぎのようになります:
すべての数を直線上に配置する──数が異なれば位置も異なるように。
(「配置」の意味は,数に直線上の点を対応させるということ。)
註 : |
さらに加えるならば: |
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数の大小の順序関係に,配置の順序が対応するようにする。
──すなわち,数が大きくなるとその位置が一方の方向にずれていく,という具合にする。
(一般的に言うと,「数の自然な位相と埋め込み先の空間の位相に関して,同相対応であるようにする」)
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しかしこれは,「満たしたい条件」と見ることもできますが,「配置が規則的でなければならないことから出てくる自然な結果」と見ることができます。
したがって,「数直線」の意味には含めなくていいでしょう。
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- 授業の型を決める
「すべての数を直線上に配置することができるか?」
──答えを知ってしまえば簡単ですが,知らない者にとっては,これはたいへんな難問です。
そして,これの解決を自ら実践することで,上に示した「数直線」の本質もわかってきます。
そこでこの授業は,「課題解決」の形に組み上げれば,素直な設計になります。
- 「課題提示」の内容を決める
「課題解決」の形に授業を組み立てることにしたら,つぎに「生徒に与える課題は,どのようなのがいいか?」と考えることになります。
自問することは,「主題の本質が示される課題は?」です。
「数直線」の場合は,「数直線」の意味を問うことばがそのまま「主題の本質が示される課題」になります。
すなわち,つぎの発問がそのまま「主題の本質が示される課題」の提示になります:
あるいは,
「実は,すべての数を直線上に並べることができる。
いまから自分でその方法を考え出してみよう。」
- 「問題解決の指導」の内容を決める
- 最初に,生徒に試行錯誤させます。
- これをさせて,どんな問題であるのかをつかませる。
──問題の勘所・要所をつかませる。
- 「きまりが必要」の意識をもつことが,ここのゴール。
- これ以降,指導は「数直線を書く」の構造化 (構造の取り出し) を行いながら,問題解決のゴールへと進みます。
この構造化の要素となるものは:
- 「基準」と「単位」の導入
- 数に直線上の点を対応させる規則
「数nと対応するのは,基準から単位のn倍の位置の点」
- この指導では,参考にするものとして,高さや時刻の表現 (位表現) を使えます。
- この指導では,
「基準・単位の恣意性」
「基準・単位の取り方によって,数直線の形が変わる」
も主題の一部になります。
これは「生徒各々に作業させ,結果を互いに紹介させる」の方法を用いることで,自ずと主題にのぼらせることができます。
- 整数から始めるのも,分数から始めるのも,両方あります。
ただし,整数から始めるのは,生徒にとって課題への入りがやさしくなりますが,「数=比」のとらえに生徒を導くのが難しくなります。
逆に,分数から始めれば「数=比」をまともに扱うことになります。
素人考えでは「やさしいから難しいへ」がよいとなります。
しかし,「やさしいから難しいへ」は,
「<本質をそらす形でやさしくしたもの>から入って,
あとで本質に入る」
ということです。
そして「本質をそらす形でやさしく」は,変な癖を頑固につけてしまうことになるので,「あとで本質に入る」はひじょうに困難になります。
「本質をそらす形でやさしく」をやった後の段はもう無いというのなら,これでもいいでしょう。しかし「本質に入る」が必須としてあり,そして本質をそらさない形がこれができるのなら,本質をそらさない形をやるべきです。
この理由から,ここでは「数直線」の課題解決に対し,「整数と分数を合わせて」の方法をとるします。(実際,直接分数から入ることは可能です。)
- 「数学的表現を与える」の内容を決める
- 行ったこと・獲得したことの内容を的確に言い表すことば (数学的表現) を,これまた学習内容として,生徒に与えます。
「的確な表現」としての数学的表現は,歴史の中で構造化され磨かれてきたことばであり,学習内容として与えられるものになります。
特に,これは「要約」とは違います。
- 「まとめ」の内容を決める
- 課題解決行動を終えたばかりの生徒にとって,行ったこと・獲得したことは,まだ整理されていません (バラバラな状態)。
これの整理が,この「まとめ」のステージで行うことです。
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