Up 「恒等式と方程式」の分類って?  


    関係式に対して「恒等式と方程式」の分類が立てられるのを,目にすることがあります。 この分類は,「恒等式」「方程式」の本来の意味にもとづけば,ズレています。

    先ず,「恒等式と方程式」は,言うならば「恒真式と方程式」です。
    そこで,「恒真式と方程式」の意味で考えます。

    「方程式」の意味は,つぎのようになります:
      「変項記号 ("place holder") を含む関係式であって,
     これを真にする代入値が求められているもの」
    これに対立するのは,つぎのものです:
      「変項記号 ("place holder") を含む関係式であって,
     "これを真にする代入値を求める" が
     無用 (意味無効) となるもの」
    この対立を「恒真式と方程式」の対立にもっていくためには,「恒真式」をつぎのように意味づけねばなりません:
      「恒真式は,"任意の代入値で真" の意味において,
     "これを真にする代入値を求める" が無用。」
    そしてこのときには,「方程式」をつぎのように意味づけることになります:
      「方程式とは,特定の代入値で真になる関係式のこと。」

    "「恒等式と方程式」の分類は,「恒等式」「方程式」の本来の意味にもとづけばズレている" と最初に言いました。 いま,この「ズレている」の内容を述べることができます。 すなわち,「特定の代入値で真になる関係式」の呼び名が「方程式」であるかというと,そうではない,ということです。 「方程式」のことばが出てくるのは,「関係式を真にする代入値は何か?」があるときです。