Up アフィン写像  


    いま,つぎの問題を考えてみる:
    直線上を時速akm で移動している。 いま時刻がT時で,基準点からbkm のところにいる。 これからx時間移動すると,基準点から何km のところにいるか?

    中学生なら,「何」を求めるのにつぎの式を立てる:
      ax+b

    しかし,どうしてこの式になるのか?
    この立式の論理を,ここで確認する。


    このときの<世界>は,つぎのもので構成されている:
      N 数:( 数, +, × )
      V1 としての時間:( (時間, ), ( 数, +, × ), × )
      V2 としての距離:( (距離, ), ( 数, +, × ), × )
      f 比例関数「時速akm」:時間距離
      A1 としての時刻:( 時刻, ( (時間, ), ( 数, +, × ), × ), )
      A2 としての直線上の位置:( 位置, ( (距離, ), ( 数, +, × ), × ), )
      F 関数「時刻がT時のとき基準点からbkm,そして時速akm」
             :時刻 → 位置

    これの数学は「線型空間・アフィン空間」で,つぎのように対応する:
      V1, V2 線型空間
      f 線型写像
      1, A2 アフィン空間
      F アフィン写像

    f とFは,それぞれつぎのように条件付けられる関数である:

    f(v × n) = f(v) ×



    F(P v) = F(P) f(v)


    そして,以上のことを使って,つぎの計算になる:

      「T時からx時間後の位置」
      =F(T時 時間)
      =F(T時) f(x時間)
      =F(T時) f(時間 × x)
      =(基準点からbkm) ( f(時間) × x) )
      =(基準点 ( km × b ) ) ( (km × a) × x)
      =(基準点 ( km × b ) ) ( km × (a×x) )
      =基準点 ( ( km × b ) ( km × (a×x) ) )
      =基準点 ( km × ( b + (a×x) ) )

    特に,「b + (a×x)」──すなわち,「ax+b」──が数計算ということになる。


    以上の推論は,すぐれて数学である。
    一方,問題に対して「ax+b」を立式することは,この数学を知らない/理解できない小・中学生にもできる。 「わからなくてもできる」ということである。

      「できる」は,数学 (論理) に基づく必要はない。
      では,どうして「できる」のか?
      パターンのとらえと「このパターンに対してはこのようにする」をやっているのである。