以下,体k上のn次元ベクトル空間Vを考える。
- 線型汎函数
kを標準的にk上の線型空間と見て,Vからkへの線型写像を考える。
この線型写像を,Vの線型汎函数と呼ぶ。
──線型形式 (linear form),一次形式 (one-form) ともいう。
Vの線型汎函数全体の集合を,\( Hom (V, k) \) と表す。
- 双対空間
\( Hom (V, k) \) を標準的に k 上のベクトル空間と見て,これをV の双対空間と呼び,\( V^* \) と表す。
ベクトル \( {\bf x} \in V \) に対する汎関数 \(\ f \in V^* \) の作用 \( \langle f,\, {\bf x} \rangle \) を,\(\ f({\bf x}) \in k \) で定義する。
- \( V = (V^*)^* \)
「双対」の意味は,\( V = (V^*)^* \) に示される。
\( V = (V^*)^* \) は,\( {\bf x} \in V \) をつぎの \( {\bf x}^* \in (V^*)^* \) と同一視することで成る:
\[
{\bf x}^* : f \longmapsto f( {\bf x} ) \ \ \ \ ( f \in V^* )
\]
- \( \langle f,\, {\bf x} \rangle \) の計算
\( V \) の基底 \( \{ {\bf e}_1 \ \cdots\ {\bf e}_n \} \) を,一つ定める。
ベクトル \( \bf x \in V \) に対しては,座標ベクトルを縦ベクトルで表すことにする。
\[
{\bf x} =
\left(
\begin{array}{c}
x^1 \\
\vdots \\
x^n \\
\end{array}
\right)
\]
\( f \in V^*\) は線型写像:\( V \longrightarrow k \) であり,これの表現行列は,n×1行列である。
これを,行ベクトルに表すことにする。
\[
f \,=\, ( y_1 \ \cdots\ y_n)
\]
\( \langle f,\, {\bf x} \rangle \) の計算は,つぎの「ベクトルの内積」(「行列の積」) になる:
\[
( y_1 \ \cdots\ y_n)
\left(
\begin{array}{c}
x^1 \\
\vdots \\
x^n \\
\end{array}
\right)
=
y_1 x^1 + \cdots + y_n x^n
\ \ \in k
\]
また,この計算を見ることで,線型汎関数は余ベクトル (covector) とも呼ばれる。
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