Up 双対空間 作成: 2017-11-27
更新: 2017-11-28


    以下,体k上のn次元ベクトル空間Vを考える。


  • 線型汎函数
    kを標準的にk上の線型空間と見て,Vからkへの線型写像を考える。
    この線型写像を,Vの線型汎函数と呼ぶ。
    ──線型形式 (linear form),一次形式 (one-form) ともいう。

    Vの線型汎函数全体の集合を,\( Hom (V, k) \) と表す。


  • 双対空間
    \( Hom (V, k) \) を標準的に k 上のベクトル空間と見て,これをV の双対空間と呼び,\( V^* \) と表す。

    ベクトル \( {\bf x} \in V \) に対する汎関数 \(\ f \in V^* \) の作用 \( \langle f,\, {\bf x} \rangle \) を,\(\ f({\bf x}) \in k \) で定義する。


  • \( V = (V^*)^* \)
    「双対」の意味は,\( V = (V^*)^* \) に示される。
    \( V = (V^*)^* \) は,\( {\bf x} \in V \) をつぎの \( {\bf x}^* \in (V^*)^* \) と同一視することで成る:
      \[ {\bf x}^* : f \longmapsto f( {\bf x} ) \ \ \ \ ( f \in V^* ) \]


  • \( \langle f,\, {\bf x} \rangle \) の計算
    \( V \) の基底 \( \{ {\bf e}_1 \ \cdots\ {\bf e}_n \} \) を,一つ定める。

    ベクトル \( \bf x \in V \) に対しては,座標ベクトルを縦ベクトルで表すことにする。
      \[ {\bf x} = \left( \begin{array}{c} x^1 \\ \vdots \\ x^n \\ \end{array} \right) \]
    \( f \in V^*\) は線型写像:\( V \longrightarrow k \) であり,これの表現行列は,n×1行列である。
    これを,行ベクトルに表すことにする。
      \[ f \,=\, ( y_1 \ \cdots\ y_n) \]

    \( \langle f,\, {\bf x} \rangle \) の計算は,つぎの「ベクトルの内積」(「行列の積」) になる:
      \[ ( y_1 \ \cdots\ y_n) \left( \begin{array}{c} x^1 \\ \vdots \\ x^n \\ \end{array} \right) = y_1 x^1 + \cdots + y_n x^n \ \ \in k \]

    また,この計算を見ることで,線型汎関数は余ベクトル (covector) とも呼ばれる。