Up 固有値・固有ベクトル  


    つぎの行列で表現される線型変換 f を考えよう:

    この線型変換 f は,枠 { (1, 0), (0,1) } をつぎのように変換する:
(1, 0)(1.5, -0.7)
(0, 1)(-0.6, 0.9)
    そしてこれに伴って,x = m,y = n ( m, n = 0, ±1, ±2, ‥‥) の格子がつぎのように赤色の格子へと歪む:

    ここで,もとの格子の各交点がどこに移動するかを,矢線で表してみる:

    さて,この矢線図をじっと見てみる。
    本来存在していない何かが見えてくるだろう:

    見えてきたものを確認しよう (下のアイコンをクリック):
















































    つぎの2本の軸が,浮かんで見える:

    この軸の意味は何だろう? ──つぎが,この軸の意味である:
軸と同方向のベクトルに対しては,線型変換 f が単純に倍変換になっている


    計算によって,つぎの二つを同時に求めることができる:

      1. 2本の軸の式──あるいは,軸と同方向のベクトル (「固有ベクトル」と呼ぶ)
      2. 各軸の上で f は倍変換になっているが,この倍の値 (「固有値」と呼ぶ)

    計算方法は,つぎのようになる:

      f は,求める軸の上のベクトル (x, y) に対しては倍変換になっている。 k 倍であるとしよう。
      f の表現行列を A とすると,つぎのようになっているということである:

        (xy) A = (kx,ky)

      これを計算すると,

        (1.5x + (-0.6)y,(-0.7)x + 0.9y) = (kx,ky)
        ⇒ (1.5 - k) x + (-0.6)y = 0,(-0.7) x + (0.9 - k) y = 0
        ⇒ (1.5 - k) (0.9 - k) x ー (-0.7) (-0.6) x = 0
        ⇒ (1.5 - k) (0.9 - k) ー (-0.7) (-0.6) = 0
        ⇒ k2 - 2.4 k + 0.93 = 0
        ⇒ k = (12 ± √51)/10
        ⇒ k ≒ 0.5,k ≒ 1.9

      上に出てきた関係式
        (1.5 - k) x + (-0.6) y = 0
      に k = 0.5 を代入すると,
        (1.5 - 0.5) x + (-0.6) y = 0
        ⇒ y = 5/3 x
      また,k = 1.9 を代入すると,
        (1.5 - 1.9) x + (-0.6) y = 0
        ⇒ y = -2/3 x

      ということで,2本の軸の式と各軸に対する固有値が,求まった。


    以上のことから,つぎのことが導かれる:

      この軸を最初から座標軸として選んでいたら,f はつぎの枠変換になっている:

    (1, 0)(0.5, 0 )
    (0, 1)( 0, 1.9)

      そしてこれに伴い,次の図で青の平行四辺形が緑の平行四辺形に歪むように,全体が変形:


    特に,線型変換 f を表現する行列が簡単な形 (「対角行列」)になる。
    これは,小学算数でやったつぎのことと対応している:
単位の取り直しによって,量の測定値を簡単にする