6.2.2 “1と見る”



 量の系 ((Q,+),(N,+,×),×) の単位uからは,“単位uによる測定”を意味する関数

u:Q─→N; u×ξ ξ(ξ∈N)

(§8.1.1)が導かれ,さらに量としての数との同型

(,id):((Q,+),(N1,+,×),×) ─→ ((NQ,+),(N2,+,×),×)
(N1=N2=NQ=N)

が導かれる。そしてこの同型において,Qの要素x=u×ξ(ξ∈N1)は1×ξ=ξ(左辺のξはN2の要素,右辺のξはNQの要素)と対応する。

 小学校算数では伝統的に“割合”指導の一環として“1と見る”が主題化されているが,以上述べたことが

“uを1と見たとき,xはξ”

の言い回しの意味である。現行で指導されている形に引き寄せてこれを図式化すれば,


のようになる。特に,“1と見る”の主題化では,“量としての数”が暗黙に導入されていることになる。

 しかしこれは,いまの数指導の駄目な局面の一つである。学習者には何よりも先ず,量と数の区別──図式的には,両者がノードとリンクの関係にあること(上図のQの段)──が確実に指導されねばならない。しかし“1と見る”の指導はこの見方を壊すことの方に向いている。

 本来なら,《数と量をしっかり区別するよう指導した上で“量としての数”という見方も指導する》という具合になるわけである。数と量の混同は,数と量の区別の上にはじめて可能になる高等技術である。

 しかも,この高等技術は不可欠な主題というわけでもない。実際,“uを1と見る”では単に“uを単位とする”でよいわけである。