Up 「数」の形式の意味/理由  


    「<量の表現や計算に使える形式>の実現」が,「数の実現」です。
    数の形式の意味/理由は,<量の表現や計算に使える形式>です。
    以下,このことを見ていきます。

    「数」を導入するときには,これにつぎの用法を見ています:

    1. 量の倍が,考えられる。
      また,ある一つの量uの何倍という形ですべての量が表される。
        任意の量qと数○に対し,qの○倍になる量が存在する。
        また,任意の量qに対し,「qはuの○倍」となる数○が存在する。
    2. 量の和が,数の和で計算される。
        任意の量qに対し,qの△倍とqの□倍の和はqの (△+□) 倍。
    3. 量の倍の倍が,数の積で計算される。
        任意の量qに対し,qの△倍の□倍はqの (△×□) 倍。

    +,× は,この用法を満たすようにつくられます。
    数には自然数,分数,正負の数,複素数,四元数といろいろあって,2数の和,積を定義する式も全然違いますが,上の用法を満たすように+,ーを定めようとすると,その定義式になるわけです。

    さらに,+,× の用法は,+,× の代数的規則を自ずと呼び込むものになります。 ──呼び込まれる規則は,つぎのものです:

    1. × に関する単位元が存在する。 (これを1と書く。)
    2. ○×△ + ○×□ = ○× (△+□)
    3. (○×△)×□ = ○× (△×□)

    どうしてこの規則が呼び込まれるのか?
    確認しましょう。

    「× に関する単位元1が存在する」

      「任意の量qに対し,q=qの○倍」となる数○を導入したい。
      この数○において,つぎが導かれる:
        量qがuの△倍であるとするとき,uの△倍=q=qの○倍=uの△倍の○倍=uの (△×○) 倍。
        qの△倍=qの○倍の△倍=qの (○×△) 倍。
      「uの△倍=uの (△×○) 倍,qの△倍=qの (○×△) 倍」を見て,× に関する単位元1を○としてとることになる。

    「 ○×△ + ○×□ = ○× (△+□) 」

      量qがuの○倍であるとする。
      qの△倍とqの□倍の和 = uの○倍の△倍とuの○倍の□倍の和。
      uの○倍の△倍とuの○倍の□倍の和 = uの (○×△) 倍とuの (○×□) 倍の和 = uの (○×△ + ○×□) 倍。
      また,uの○倍の△倍とuの○倍の□倍の和 = uの○倍の (△+□) 倍 = uの (○× (△+□)) 倍。
      「uの (○×△ + ○×□) 倍 = uの (○× (△+□)) 倍」を見て,(○×△)×□ = ○× (△×□) を規則にすることになる。

    「 (○×△)×□ = ○× (△×□) 」

      量qがuの○倍であるとする。
      qの△倍の□倍 = uの○倍の△倍の□倍 = uの ((○×△)×□) 倍。
      また,qの△倍の□倍 = qの (△×□) 倍 = uの○倍の (△×□) 倍=uの (○× (△×□)) 倍。
      「uの ((○×△)×□) 倍 = uの (○× (△×□)) 倍」を見て,(○×△)×□ = ○× (△×□) を規則にすることになる。