0.2 現行の数指導の特徴──ノウハウの指導
現行の数指導の特徴を述べるならば,
《数指導を数使用の指導として,かつ数使用のノウハウの指導(註)として行なう》
ということになります。
数使用の指導は,《量の問題の処理としての数使用》の指導です。そしてこれをノウハウとして指導しているとは,《量の問題の数の問題への還元》をそれの結果のみ指導しているということです。
数指導は,“ノウハウの指導",“結果の指導”ではなく“生成の指導”でなければなりません。これがわたしの立場です。
現行の数指導がつぎの認識に基づいているのならば,わたしは現行の中から出発します:
学習者の能力を考えると,《量の問題の数の問題への還元》を明示的に主題化することは不可能である;したがって,《還元》はノウハウとして結果のみ指導する他ない。
即ち,“生成の指導”を
- “ノウハウ/結果の指導”の不都合の指摘
- “生成の指導”の実現可能性の証明
の形で立論することが,わたしの課題になります。
しかし,現行の数指導には“数量一元論”の発想も見え隠れしています。そして,この発想の下の指導に対しては,これを外から阻却します──《誤謬として阻却し,主題研究の場を整備し直す》──というのがわたしの立場になります。
(註) ここで“ノウハウの指導”とは,
“合わせる問題には足し算を立式しなさい”
“整数のときに使った《速さ×時間=距離》は,分数のときにもそのまま使えます”
のような,“いかに”を以って“何”に代える指導のことです。これには“なぜ”がありません。“何”を与えていないから“なぜ”も問えないわけです。