2.4.1 “内包量/外延量”の錯誤



 例えば,“40km/h の船の甲板から 60km/h で飛び出す”と“40km/h の自動車と 60km/h の自動車をつなぐ(?)”に対し,前者では 40km/h と 60km/h の和を考え,後者では考えない。この二つの違いは,モノ(事態)に対する量形式の投企の仕方の違いである。

 “量形式の投企”の主題化は,“量”のシンタクス(統語論)とセマンティクス(意味論)の主題化に他ならない。

 シンタクスはセマンティクスから独立している。そして,“速さ”のシンタクスは“40km/h+60km/h”の式を許す。

 “量”の主題は〈形式〉と〈形式の投企〉──それぞれシンタクスとセマンティクスに属する──である。そして,“量”の類型化は〈形式〉の類型化である。しかし,“内包量/外延量”の概念は〈形式〉の類型化ではないし,〈形式の投企〉の類型化にもなっていない。この概念は,思考の途中停止によって保っている。