4.2.10.1 (N,+,×,≦)からの(ND,+,×,≦)の導出



 順序構造を伴う数の系 (N,+,×,≦) からは,ND が順序構造を伴う数の系 (ND,+,×,≦) として,つぎのように導出される。

 x,y∈ND に対し,x=s−r,y=t−rとなるr,s,t∈Nが存在する(註1)。このとき,x≦y をs≦tで定義する。── x,yを上のように表現したときの条件s≦tは,r,s,tの取り方に依存していない(註2)から,この定義は意味をもつ。そして,この≦はND の上の全順序関係になる。

 さらに,この≦に関して系 (ND,+,×,≦) が順序構造を伴う数の系になる(註3)

 >0である元を正元,<0である元を負元と呼ぶ。

 x∈ND が正元であることと,−xが負元であることとは,同値。

 m,n∈Nに対し,

m<n n−m>0
m=n n−m=0
m>n n−m<0

が成り立つ。



(註1) p,p,q,q′∈Nに対し,q−p=(q+p′)−(p+p′),q′−p′=(p+q′)−(p+p′)。

(註2) x=s−r=s′−r′,y=t−r=t′−r′のとき,(s+t′)+(r+r′)=(s+r′)+(t′+r)=(r+s′)+(t+r′)=(s′+t)+(r+r′),よってs+t′=s′+t。したがって,s≦tとs′≦t′は同値。

(註3) x=n−m,y=n′−m,z=q−pとすると,x+z=(n+q)−(m+p),y+z=(n′+q)−(m+p)。x≦yのときn≦n′で,これよりn+q≦n′+q。よって,x+z≦y+z。