4.2.7 NDの中へのNの埋め込み
ND が量の係数の系と意味づけられているとき,“量のn回の累加”を量に対するn∈Nの倍作用と考えれば,n∈Nに関するn倍と(+n)倍は同値である。このことを見て,“NDの中へのNの埋め込み”をつぎのような形で導入する。
写像i:N─→ND を
i(n)=+n (n∈N)
で定義するとき,iは1対1で,
i(m+n)=i(m)+i(n)
i(m×n)=i(m)×i(n)
が成り立つ(註1)。そこでこのiによって,(N,+,×)を(ND,+,×)の部分(i(N),+,×)と同一視できることになる。言い換えると,iによって,(N,+,×)は(ND,+,×)に埋め込まれる。またこの意味で,ND はNの拡張である。
n∈Nに対しi(n) をnで表わすとき,つぎが成り立つ:
−n=−n
n−m=n+(−m)(註2)
(註1) (1) i(n)=i(m)のとき,(n+n)−n=+n=+mよりn+n=n+m,よってn=m。即ち,iは1対1。
(2) i(m+n)=(m+m+n+n)−(m+n)=((m+m)−m)+(n+n)−n)=i(m)+i(n)。
(3) i(m×n)=((m+n)2+m×n)−(m+n)2=((m+n)−n)×((m+n)−m)=i(m)×i(n)。
(註2) (1) −nは+n=nの対称元。
(2) n+(−m)=(+n)+(−m)=((n+n)−n)+(m−(m+m))=(n+n+m)−(n+m+m)=n−m。