9.3.2 数のテンソル積



 数の系(N,+,×)に対し,N×N上の同値関係〜をつぎのように定義する: そして,商集合(N×N)/〜 をNNと書き,(ξ12)∈N×Nを代表元とする同値類をξ1ξ2と書く(“テンソル積")。また,N*≠Nのとき,(N×N)\(N*×N*)は一つの同値類であるが,これを0で表わす。

 NNにおける内算法(加法)+を,つぎのように定義する(註1)

ξ+1η=1(ξ+η)

また,外算法×:(NN)×N ─→ NNをつぎのように定義する(註2)

(1ξ)×η=1(ξ×η)

 このとき,系((NN,+),(N,+,×),×)は量の系になっている──実際,同型対応

(i,id):((N,+),(N,+,×),×)─→ ((NN,+),(N,+,×),×)
が,
i(ξ)=1ξ
で与えられる(註3)



(註1) NNの任意の二要素ξ1ξ2,η1η2 に対し,定義に従えば,ξ1ξ2+η1η2=11×ξ2)+11×η2)=11×ξ2+η1×η2)。
 いま,ξ1ξ2=ξ1ξ2′,η1η2=η1η2′ とすると,ξ1×ξ2+η1×η2=ξ1′×ξ2′+η1′×η2′。よって,NNにおける+の定義は,well-defined。

(註2) NNの任意の要素ξ1ξ2 とη∈Nに対し,定義に従えば,(ξ1ξ2)×η=(11×ξ2))×η=11×ξ2×η)。
 いま,ξ1ξ2=ξ1ξ2′ とすると,ξ1×ξ2×η=ξ1′×ξ2′×η。よって,×の定義は,well-defined。

(註3) (1) 先ず,iはNのNNの上への1対1対応である。実際,NNの任意の要素ξηに対し,ξη=1(ξ×η)=i(ξ×η)。また,i(ξ)=i(η) のとき,1ξ=1η。ξ∈N*ならξ=1×ξ=1×η=η。また,ξ=0ならη=0=ξ。
(2) i(ξ+η)=1(ξ+η)=1ξ+1η=i(ξ)+i(η)。
(3) i(ξ×η)=1(ξ×η)=(1ξ)×η=i(ξ)×η。