Up 基礎 :「主題研究・授業設計」の方法 作成: 2008-06-22
更新: 2008-06-22


    修士課程に入ってくる学生は,「主題研究・授業設計」の方法をもっていない。 これをある程度もてるようにしてから,修論作成の課題に入っていくという手順になる。
    修論作成への取り組みを開始した後も,「主題研究・授業設計」の修行はずっと並行して行われる。

     註 : 「主題研究・授業設計」の方法の習得は,教員が終生取り組む課題である。 これには,終わりがない。(「少年易老,学難成」の世界)


    1. 「主題研究」
    「主題研究」というときの「主題」は,数学の内容である。
    「主題研究」の中身は,数学を知ること,すなわち数学の勉強である。

    学生は,主題研究をしようとしない。
    学生は,つぎの感覚でいる:

      自分はそれを小・中・高で習ってきている。
      こんどは,自分がこれを教える番だ。

    この学生が授業づくりをすると,つぎのようになる:

      小学算数なら,小学生の授業ごっこ
      中学数学なら,中学生の授業ごっこ
      高校数学なら,高校生の授業ごっこ

    めちゃくちゃな授業をつくり,しかもめちゃくちゃを自覚できない。 自分ではたいそう立派なものをつくったという感覚でいる。
    (教育実習で「研究授業」として披露される授業は,たいていこれである。)

    そこで,「主題研究」の指導は,つぎの形をとる:

      主題になっている数学を教えながら,
      彼らの「自分は知っている・わかっているつもり」を壊す。

    壊す方法は,「なに・なぜ」を問うことである。 学生は,このタイプの問いには答えられない。
    ただし,自分が答えられないことを見ても,「自分は知っている・わかっているつもり」がただちに壊れるわけではない。 学生の「自分は知っている・わかっているつもり」は,頑固にカラダに染みついている。 ──指導として<壊す>を特段に行わねばならない所以である。


    2. 「授業設計」
    「授業設計」の内容は,授業の論理的構成である。

    学生は,論理にひじょうに弱い。 「論理的構成」の概念がないので,めちゃくちゃな構成をする。 含意の引き出し方のおかしさや循環論法を指摘しても,論理自体がわかっていないので,通じない。
    しかし,いまから論理の教育をまってもしようがないので,「授業設計」の指導の中で,論理を並行して指導していくことになる。

      例えば,予備知識なしに「正負の数」の授業を学生に勝手につくらせると,たいてい温度や数直線から始める。
      「温度」の物理学を知って入れば,温度はとても素材にできるものではないことがわかる。実際,学生が「温度」を扱っているつもりのものは,温度計の目盛りである。
      「正負の数」の数学を知っていれば,単元を論理的に構成するとき,どのあたりで数直線を登場させることができるかがわかる。それは,数学的には,アフィン空間の概念を導入し,同型の概念を用いて構成できるものである。よって,ずっと後になってからの登場になる。