Up はじめに──本論考の趣旨  


    ネットには,「かけ算の順序に意味があるのか,教えて下さい?」の質問がよく出てくる。 この質問の本意は,こうである:
    かけ算の順序」みたいな基本的なことをいまさら疑問に思うとは,いったいどうしたことだろう?
    自分はいったい,どんな教育を受けてきたのだろう?
    周りも,自分と同じようだ。
    試みにこの質問を出して,いったいどんなリアクションが出てくるか見てみよう。

    この質問に対するいろいろなリアクションのうちの一つに,つぎのタイプのものがある:<量は数の抽象>のイデオロギーからの回収。 しかしこれは,回収にかかるが,自分では答えをもっていないことを曝すふうになる。
    (すぐに回収にかかろうとするのは,イデオロギー一般の癖である。自分では答えをもっていないのは,イデオロギー一般の特徴である。)

    そこで,質問者はつぎのように得心するのである:
    やはり,みんなわかっていないのだ。
    指導口調の者も,したり顔をしているだけなのだ。

    本テクストは,この質問者へ「みんなわかっていない」がどういう状態/構造のものかを伝えようとするものである。
    これも一つの「イデオロギーからの回収」になるのかどうかは,読者の判断に委ねる。