Up 量の積」をテンソル積で合理化するのは自家撞着に 作成: 2011-08-01
更新: 2011-08-06


    数は量の抽象」を唱える者は「数の積は量の積の抽象」を言わねばならない。 しかしこれは,無理をやることであるから,自ら窮する。
    そんなときに「量のテンソル積」の概念と出会えば,「数の積は量の積の抽象」は数学も支持すると思うかも知れない。 実際,このように受け取って色めき立つという場面が,過去に一時期見られた。

    しかし,テンソル積は,救いにならない。 すなわち,量のテンソル積は「数の積は量の積の抽象」を導くものではない。

    実際,テンソル積は複比例関数に溯る。さらに線型代数でいえば,複比例関数は線型空間に溯る。そして線型空間のスカラ (数に相当) はベクトル (量に相当) の抽象ではない。
    数の積は量の積の抽象」の合理化にテンソル積を用いようとすることは,却って数と量の本質的違いをスカラとベクトルの構造的違いの形で強調することになり,ヤブヘビになるのである。