Up 数学授業とは何かを考えられるようにする 作成: 2013-03-07
更新: 2013-03-07


    数学教育の授業・ゼミの役割は,学生を<算数・数学科の授業を担当してよい者>へと変容させることである。
    そして,これを実現することの一つとして,「数学授業とは何かを考えられるようにする」を行う。

    「数学授業とは何かを考えられるようにする」は,「学生を,数学授業とは何かの問いを立てる者にする」である。
    数学授業とは何かの問いを自らに立てさせるものは,気づきではなく,能力である。
    そしてこの能力は,数学教育の授業・ゼミで陶冶することになる能力である。

    この能力の陶冶では,学生がこれまで自分の経験の中で形成してきている「数学」「授業」「数学授業」への思い込みが,障碍になる。
    即ち,この思い込みは,「数学授業が何かは知っている;自分にとっての数学授業の課題は,指導法だ」に転じる。
    how が課題であると思い,what・why に向かわない。
    「数学授業とは何かを考えられるようにする」は,学生の先入観 (勘違い) を壊しつつ what・why に向かわせるという趣きになる。

    「数学授業とは何かを考えられるようにする」は,「数学授業とは何かをわからせる」ではない。 あくまでも「考えられるようにする」であって,「わからせる」とはならない。
    「数学授業とは何か」の問題領域は,複雑系である。
    この複雑系に入っていくことは,学部の教員養成課程のキャパシティーを超える。

    「数学授業とは何か」の論点は,「個の変容」をこの問いの意味としたときは,つぎのものである:
    1. 授業のゴールは何か?
    2. これが確かに「ゴール」であるという意味は?
    3. ゴールに至ったとは,どういう状態か?
    4. ゴールに至るプロセスは?
    5. これが確かに「ゴールに至るプロセス」であるという意味は?
    「数学授業」の「数学」の意味は,この文脈で考察されるところのものになる。