Up 「実用」がわかっていない 作成: 2008-03-10
更新: 2008-03-10


    「実用」の実現を,どのように考えたらよいか?
    考え方の一つのタイプに,「使える道具をたくさん取り揃える」「知識の引き出しをたくさん持つ」というのがある。
    体系バラバラ主義の問題解決論は,これの一例であり,「問題解決のストラティジーを身につける」を学習の意味にする。
    観察・体験主義もこのタイプであり,「使えるパフォーマンスをたくさん身につける」を学習目的にする。

    数学をこのようにやったら,すぐに破綻する。
    数学では,「道具」や「引き出し」は<生成>するものになる。
    生成の核になるのは,<体系の理解>である。
    これは,数学に限らず,体系的学問一般の方法である。


    「実用」には,体系がある。
    この体系を理解しないと,「実用」の実現はできない。

    この体系は,目には見えない。
    体系のあることを知らない者は,目に見えるもの・感じられるもの (=体系の現象) を直接どうこうしようとする。
    体系の現象はつねに移ろうので,このやり方は成功しない。

    「実用」には体系があり,したがって「実用」へのアプローチは体系的アプローチになる。 体系の理解の仕方が身につくことが,「実用」を実現できるようになるということである。


    ここで,つぎの反論が出てくる:
      別分野になったら,これまでの体系学習は白紙になってしまうではないか

    教育学では,この反論に「転移 (transfer)」で応ずる:
      一つの体系の方法を身につけることは,別の体系を身につけることに効く。
      しかも,これが体系学習の唯一信じられる方法である。

    体系学習の転移は,複雑なプロセスであって,実験的に証明できない。 しかし,これの正しいことは,経験を積むほどに確信されてくる。