オートポイエーシス (autopoiesis) 的システム論は,本論考が学校数学に対し立論しようとする現成論と同じものである。
そして,学術 (科学) の論であるから,哲学の衒学的なことばづかいと比べて,よく言語化されている。
「現成」の構造・機序も,システム論の形で述べられている。
そこで,オートポイエーシス的システム論の言い回しを借りて,「現成」の構造・機序を定めることにする
「オートポイエーシス」のシステム論は,ウンベルト・マトゥラーナ (Maturana) とフランシスコ・バレーラ (Varela) の生命システム論が出自である。
この考えは,ニクラス・ルーマン (Luhmann) の社会システムへの応用によって,分野横断的に広く知られるところとなる。
オートポイエーシス的システムは,およそつぎのように特徴づけられる:
1. 円環的な構造 (自己回収的 self-referrential)
2. 自己による境界決定 (自己画定的)
これは,「現前の回収が,即ち現前」ということである。
そして,「ウロボロス」がこれのイメージになる。
ムクドリの集団飛行は,「ウロボロス」(「現前の回収が,即ち現前」) になっている:
そして,「自己回収的」「自己画定的」の含蓄として,それぞれつぎのことが導かれる:
「自己維持のみがその機能」
「入力と出力を持たない」
こうして,オートポイエーシス的システムは,「現成」である。
特に,「意味/出口/是非/進歩」と無縁である。
註 : |
マトゥラーナ&バレーラは「オートポイエーシス」を生命システムの必要十分条件にする。
よって,この概念を生態系や社会システムに転用するのは,本来,マトゥラーナ&バレーラの退けるところとなる。
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Maturana, H.R. & Varela, F.J. 1972.
"Autopoiesis: the organization of the living"
In 河本英夫訳 (1991) 『オートポイエーシス ― 生命システムとは何か』, 国文社.
(i) |
オートポイエティック・マシンは自律的である。
それがどのように形態を変えようとも,オートポイエティック・マシンはあるゆる変化をその有機構成の維持へと統御する。‥‥
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(ii) |
オートポイエティック・マシンは個体性をもつ。
すなわち絶えず産出を行い有機構成を普遍に保つことによって,観察者との相互作用とは無関係に,オートポイエティック・マシンは同一性を保持する。‥‥
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(iii) |
オートポイエティック・マシンは,特定のオートポイエティックな有機構成をもっているので,そしてまさにそのことによって,単位体を成している。
オートポイエティック・マシンの作動が,自己産出のプロセスのなかでみずからの境界を決定する。
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(iv) |
オートポイエティック・マシンには入力も出力もない。
オートポイエティック・マシンとは無関係な出来事によって攪乱が生じることがあるが,このような攪乱を補う構造変化が内的に働く。
‥‥これらの変化は,オートポイエティック・マシンを規定する条件である有機構成の維持につねに従属している。‥‥
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