Up 「宇宙の膨張」 作成: 2018-01-04
更新: 2019-06-16


    天体を観測すると,天体は観測者の自分から遠ざかって行くように見える。 この現象を,「宇宙の膨張」と謂う。

      もちろん,遠ざかって行くのが実際に見えるのではない。 「赤方偏移が観測されるのだが,赤方偏移の理屈に立てば ‥‥‥」ということである。

    ここで謂う「膨張」は,「空間の膨張」がこれの意味である。
    「宇宙の膨張」は,「星の移動」ではない。──「宇宙の膨張」において,星は「静止」している。
    特に,「宇宙の膨張」は「ビッグバン」とは別の話である。

    宇宙論は,膨張宇宙のモデルづくりに向かう。
    これには,比例膨張モデルと加速膨張モデルがある。
    以下,比例膨張モデルを見ておく。


    比例膨張モデルは,つぎを法則とするものである:
      天体Mが遠ざかる速度は,自分とMの距離Dに比例する
      即ち,
        \[ \frac{d}{dt}D \,=\, H\, D, \ \ \ \ \ H : 定数 \]
    この法則を「ハッブルの法則」と謂い,定数Hを「ハッブル定数」と謂う。

    わからぬことだらけの宇宙が相手なので,ハッブル定数の値は当然流動的である。 ここでは,つぎの値を用いるとする:
      \[ H = 72 \ \ \ \left[ \frac{km}{秒} \frac{}{MPC} \right] \\ Mpc = 3.082 × 10^{19} \,km \]

    「\( 10^{19} \,km\)」はイメージしにくいので単位「光年」に換算すると:
      \[ 光年 = 9.46 \times 10^{12} km \\ Mpc = \frac{3.082 × 10^{19}}{9.46 \times 10^{12}} 光年 = 3.26 \times 10^6 光年 = 326 万光年 \]
    よって,つぎのようになる:
      「自分との距離が 326 万光年 の天体は,
       自分から速度 72 km/秒 で遠ざかる」
    言い換えると,
      「自分との距離が 1光年 の天体は,
       自分から速度 (72×103)/(326×104) m/秒 で遠ざかる」
    計算すると,
      「自分との距離が 1光年 の天体は,
       自分から速度 (2.21×10−2) m/秒 で遠ざかる」


    さらに,「(2.21×10−2) m/秒」を単位「光年/年」(即ち「光速」) に換算してみる:
      光速 = 30万km/秒 = (300000×1000) m/秒
        = (3×108) m/秒
      よって,
      (2.21×10−2) m/秒
        = (2.21×10−2)/(3×108) 光速
        = (7.37 ×10−11) 光速
    よって,
      「自分との距離が 1光年 の天体は,
       自分から速度 (7.37 ×10−11) 光年/年 で遠ざかる」


    そこで例えば《自分から光速で遠ざかる点は,自分との距離がどれだけか?》では:
      光速は,1光年/年。
      (7.37 ×10−11) 光年/年に対し1光年だから,1光年/年に対しては
        1 ÷ (7.37 ×10−11
        = 0.136 ×1011
        = 136 ×108)
        = 136億 (光年)