Up 「比例関係」の概念をもっていないのかも 作成: 2011-03-28
更新: 2011-03-28


    政府・マスコミ・学者は,放射能数値の安全を伝えるのに,「2マイクロシーベルトは,胃X線検診1回の放射線量600マイクロシーベルトと比べてすごく小さい値,ぜんぜん安全」のような詭弁を使ってきている。
    このときの「2マイクロシーベルト」は「2マイクロシーベルト/時」であって,算数のことばでいうと「時間と放射線量の間の比例関係」である。詭弁の構造は,<時間と放射線量の間の比例関係>と<放射線量>という比較できないものを比較してみせるというものである。
    ( 放射能数値安全報道と数学教育の責任)

    この詭弁を,はじめのうちは,「政府・マスコミ・学者がわざとやっているのだ」というふうに見ていた。 しかし,この詭弁を何度も聞かされているうちに,「本人は,本当のことを言っているつもりなのでは?」という考えに変わってきた。

    マスコミに登場してこの詭弁を言う学者は,比例関係の「2マイクロシーベルト/時」を実際に扱うことがないのであろう。
    すなわち,彼らは,「一回の放射線量はどれだけ」の世界に棲んでいて,「継続する放射線量」を自分の世界にはしていない。 「2マイクロシーベルト/時」の比例モデルで放射線の蓄積量を計算することはないし,ましてや「継続する放射線量」モデルで放射線の蓄積量を区分求積で計算するということはない。

    あり得ないことのように聞こえるかも知れないが,「専門家」とはそういうものである。 スッポリ抜けている概念は,いくらでもある。
    そして,「比例関係」も,この「スッポリ抜けている概念」のうちに入ってくるというわけである。

    「比例関係」を使えない学者に,政府・マスコミもツッコミを入れることができない。 そしてこれは,しようがない。 政府・マスコミには,なおさら「比例関係」音痴を斟酌してやらねばならない。

    というわけで,政府・マスコミ・学者が,専門的立場から適切なことを言ってくるというふうには,思わない方がよい。 だれにも未経験な原発事故という出来事に際しては,彼らもシロウトなのである

    政府・マスコミ・学者に自分を託するというのではなく,自己責任で行動できるよう自分を成長させるために勉強するという姿勢が,いまは肝心ということである。