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Ball (2019), pp.93,94
発生の異なる段階における異なる細胞型での遺伝子の調節、活性化、抑制を、エピジェネテイクス (後成的遺伝) と呼ぶ。
この言葉は文字どおり、遺伝的性質に何かを追加することを意味するが、言外に含まれる本当の意味は、遺伝子活性の目に見える結果──細胞の組織型などの表現型──が遺伝子型 (つまりどの遺伝子が存在するか) で決まるのではなく、どの遺伝子が活性化するかで決まるということだ。
つまりエピジェネティクスとは、遺伝子を発現させるか、あるいはどのくらい発現させるかを変更するために、遺伝子にさまざまな修飾が施されることをいう。
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同上, pp.99,100
ワディントンが "エピ遺伝子型" という概念──本人は「遺伝子型と表現型のあいだのあらゆる複雑な発生過程」と呼んだ──を1942年に提唱したことを考えると、近年エピジェネティクスが、生物学に "革命を起こしつつある" 分野と描写されているのは、少し奇妙に思える。
おそらく、細胞が遺伝子のパンチカードに制御された自動ピアノにすぎないという単純すぎる見かたから始めれば、つまり、初めから間違った物語を読まされていれば、そんなふうに感じられるのだろう。
とはいえ、エピジェネティクスが細胞と分子のスケールでどう働くのかが以前より詳しく理解されるようになったのは、ここ数十年のことにすぎない。
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- 参考Webサイト
- 引用文献
- Ball, Philip (2019) : How to grow a human ─ Adventers in Who Wea Are and How We Are Made
- HarperCollins/University of Chicago Press, 2019
- 桐谷知未[訳]『人工培養された脳は「誰」なのか──超先端バイオ技術が変える新生命』, 原書房, 2020
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