Up 体細胞核移植 (Somatic cell nuclear transfer, SCNT 作成: 2018-05-15
更新: 2024-07-18


  • 動物細胞の核には全能性がある
  • 卵母細胞

  • 「クローニング成功」の内実
       更科 (2024), pp.230,231
    ブカルドは絶滅してしまったが、冷凍した体細胞は残っている。
    そこで、アルベルトは、ブカルドのクローンの作製にとりかかった。
    まず、冷凍保存されていたブカルドの体細胞から細胞核を取り出した。
    それから、あらかじめ核を取り除いておいた、ヤギの未授精卵に、ブカルドの細胞核を移植した。
    こうして作られた胚を、代理母となるヤギの子宮に入れて成長させ、そして出産させたのである。
    このようなクローン作製でいつも問題になるのは、成功率の低さだ。
    クローン羊のドリーは、277個の未受精卵に核移植が行われた中で、唯一の成功例だった。
    今回のブカルドの場合も、782個の未受精卵に核移植が行われたが、最終的に出産まで漕ぎ着けたのは1頭だけだった。
    その1頭の出産に際して、代理母のヤギの帝王切開が行われた。
    2003年の7月のことである。
    そして、短い毛がびっしりと生えた、体長約50センチメートルのブカルドのメスの赤ちゃんが生まれた。
    赤ちゃんを取り上げたのはアルベルトであった。
    それは、3年前に死んだセリアのクローンであり、絶滅種が蘇った瞬間だった。
    しかし、赤ちゃんは息をしていなかった。
    人間もヤギも、子宮の中にいるときは、羊水の中で暮らしている。
    つまり、水中にいるわけで、空気呼吸はしていないし、肺も使っていない。
    しかし、生まれると空気呼吸をしなくてはいけない ‥‥‥
    しかし、セリアのクローンは、いつまで経っても息をしなかった。そして、10分ほどで死んでしまった。‥‥‥
    ブカルドの赤ちゃんを解剖してみると、肺が二つではなく三つあったことがわかった。‥‥‥