Up 「獲得形質の遺伝」(ラマルキズム) 作成: 2015-01-09
更新: 2015-01-12


  • 「獲得形質の遺伝」?
    • 「遺伝子の表現型は遺伝するか?」

  • 「獲得形質の遺伝」の含蓄
    • 表現型が遺伝するとは,表現型が生殖細胞に伝わるということ
      (どうやって伝わる?)
    • 精子は,DNA だけ
      よって,表現型が生殖細胞に伝わるとは,DNAに変化が起こるということ
      (どんな変化?)

  • 確認:「獲得形質の遺伝」は否定されてきた
    • 身体の諸器官 (体細胞) で起きた適応的な変化は,生殖細胞には伝わらない。
    • 「獲得形質の遺伝」は,分子遺伝学的説明が存在しないのが弱点

  • そもそも,「獲得形質の遺伝」を見込みたいのは,獲得形質をよいことのように思うからである。
    「子孫に伝わらないのはもったいない」と思うからである。
    何かを残して死にたいと思うからである。
    しかし,この思いは間違いである。
    この思いは,ただの独り善がりである。
    自分の獲得形質は,子孫に負わせれば子孫の迷惑となるものである。
    よって,遺伝が合理的なメカニズムなら,「獲得形質の遺伝はない」となる。



  • 参考/情報サイト
  • 参考
    『動的平衡2』(福岡伸一, 木楽舎, 2011) の pp.203-214 で,「遺伝子以外によっても遺伝現象は生じる」の論が展開されている。しかしその内容は,「遺伝子以外によっても遺伝現象は生じる」の論になっていない。
    例えば,「自分の獲得形質としての<遺伝子のスイッチがオン・オフされるタイミング>は,自分の子に遺伝する」が,つぎのように述べられている:
    [ヒトとチンパンジーの] DNA情報におけるこの2パーセント足らずの差というのは,特別の遺伝子を持っているか,いないか,といった質的な差ではない。‥‥
    仮に遺伝子操作によって‥‥2パーセントの差をすべて書き換えたとしても,チンパンジーはヒトにはならない。 では,いったい何がヒトをヒトをヒトたらしめるのだろうか。 それはおそらく遺伝子のスイッチがオン・オフされるタイミングの差ではないか。‥‥
    ここで重要なのは,[サルからヒトへの進化] のような変化は,[突然変異でなくても,遺伝子のスイッチがオン・オフされるタイミングの変化で] 実現できる変化だということである。

    (『動的平衡2』, pp.207-212)
    しかしこれは,「自分の獲得形質としての<遺伝子のスイッチがオン・オフされるタイミング>は,自分の子に遺伝する」の論ではなくて,「自分が親から受け取った<遺伝子のスイッチがオン・オフされるタイミング>は,自分を経て,自分の子に遺伝する」の論である。「獲得形質」と結びつく話ではない。
    また,「エピジェネティックス」を「遺伝子以外によっても遺伝現象は生じる」の味方のように取り上げているが,「エピジェネティックス」の捉えもおかしい。