「ほ乳類の精[卵]巣では,
少数 (1つ?) の精[卵]巣幹細胞 (雄[雌]性生殖幹細胞) が,
自分自身を保存 (自己複製) しながら,
分化細胞の精[卵]子を生み出し続ける (非対称分裂)。」
──ということになっているが,生殖幹細胞のシステムは未だ謎のまま。
「一般に,幹細胞が正常に機能するためには,
特殊な微小環境 (ニッチ) における制御が不可欠。」
──ということになっているが,ニッチの構造と機能は未だ謎のまま。
- 卵巣幹細胞 (雌性生殖幹細胞) から卵が発生する様子
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甲斐歳惠
ショウジョウバエの卵巣幹細胞システムは、幹細胞を維持するためのニッチと呼ばれる微小空間内外での幹細胞の制御機構に数々の先鞭をつけてきたモデル系です。
この幹細胞システムでは、卵巣の先端に位置するニッチ内で生殖幹細胞が非対称分裂し、一つは幹細胞としてニッチ内に留まります。
生殖幹細胞は、ニッチ細胞からTGFβリガンドを受け取ることができ、未分化状態を維持しています。
一方、もう一つの娘細胞はニッチを離れて、分化プログラムを開始し、減数分裂を経て卵として成熟していきます。
細胞分化の際には、染色体高次構造のダイナミックな変化が、多くの遺伝子の発現制御に関与していると考えられています。
さらに、染色体高次構造は、DNA塩基修飾や染色体に結合するインスレーターによって制御されています。
即ち、生殖幹細胞におけるDNA塩基修飾や染色体高次構造などの非ゲノム情報を複製する機構は、生殖幹細胞を維持するメカニズムであり、この破綻によって分化が始まると考えられます。
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- 始原生殖細胞の形成
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Ball (2019), p.72
いわゆる始原生殖細胞の形成は、ヒト胚の発生初期、受精後2週間ほどで起こる。
これは生殖腺が形成され始めるより前、つまり胚がまだどちらかの性に "目覚める" よりも前だ。
まるで胚がこれらの細胞をひとまず取っておいて、卵子と精子のどちらにするかの問題を先送りしているように思える。
やがて生殖腺自体がこの過程を導き、化学信号を送って、始原生殖細胞に、どちらの配偶子になるかを指示する。
妊娠6週目ごろにその準備が整う。
それまでには、発生過程にある胚のなかを生殖細胞が目的地まで移動している。
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- 参考ウェブサイト
- 引用文献
- Ball, Philip (2019) : How to grow a human ─ Adventers in Who Wea Are and How We Are Made
- HarperCollins/University of Chicago Press, 2019
- 桐谷知未[訳]『人工培養された脳は「誰」なのか──超先端バイオ技術が変える新生命』, 原書房, 2020
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