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Ball, P. :『枝分かれ──自然が創り出す美しいパターン3』
pp.262-264
自然界で形成されるパターンの美しさと複雑さの中心にあるのは,せめぎ合いなのである。
闘いがあまりに一方的だと形はすべて消えてしまい,残るのはまとまろうともせずに移ろうランダム性か,のっぺらぼうの均質性だ。どちらにせよ,魅力的ではない。
これらの両極に挟まれた,わずかな変化が大きく作用する肥沃な国境地帯で,パターンは危険と隣り合わせに存在している。
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Kimmerer, R.W. :『コケの自然誌』
pp.107,108
氾濫の頻度が高いところは [これに耐えられる] ある一種類 [ゼンマイゴケ] が独り占めし、水に邪魔されにくいところは [水に弱いが水に邪魔されないところでの勢力争いだったら負けない] 別の種類 [ジャゴケ] が占領する。
ではその中間はどうか。
そこにはさまざまな種類が生育しており、「広告募集中」と書かれたビルボードのように岩が剥き出しの部分もところどころにある。
氾濫頻度が中くらいのところは、どれか一種類のコケが占領することなく、多様性が高かった。
二つの強大勢力に挟まれて、多いところでは10種類もの異なった種が生息していたのだ。
‥‥‥
生態学者によれば、撹乱が皆無のときには、ジヤゴケのような強者が徐々に他の種を侵害し、競争的優位によってそれらを駆逐してしまう。
撹乱が頻繁なところでは、それに耐えられる最も頑健な種しか生き残れない。
だがその両極の間の、撹乱の頻度が中庸なところでは、多様な種の繁茂を可能にするバランスが保たれているらしいのだ。
撹乱の頻度が、競争的優位による一種独占を防ぐに足るほどには高く、かっ、多様な種が次々と定着できるだけの安定した区間があるのである。
多様性は、さまざまな生育年数のさまざまな種があるとき、最も大きくなる。
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- 参考サイト
- 参考文献
- Philib Ball : Nature's Paterns : A tapestry in three parts (1.Form, 2.Flow, 3.Branches), Oxford University Press, 2009.
『自然が創り出す美しいパターン』, 早川書房 (ハヤカワ文庫), 2016.
「1.かたち」(林大[訳]),「2.流れ」(塩原通緒[訳]),「3. 枝分かれ」(桃井緑美子[訳])
- Kimmerer, R.W. : "Gathering Moss: A Natural and Cultural History of Mosses", Oregon State University Press, 2003.
(三木直子|訳『コケの自然誌』, 築地書館, 2012)
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