Up 木炭 作成: 2021-11-04
更新: 2021-11-04


      Ennos (2020), pp.135,136
     焼き物を作るうえでは一つだけ問題がある。水を通さない強いものになるような高温にまで熱するのは、きわめて難しいし危険なのだ。
    第2章で述べたように焚き火は、少なくとも最初のうちは200〜300℃までしか温度が上がらず、揮発成分が蒸発しきって炭素だけが残るとようやく、最大で600℃くらいまで上がる。
    新石器時代の人々は、地面に穴を掘ってその中で壷を焼くことで (史上初の焼き物窯だ)、温度を800℃くらいまで上げることができた。
    その高温状態を維持するために彼らは、木を、炭素だけからなる新たな高密度のエネルギー源に転換させた。
    そのエネルギー源とは木炭である。
     木から木炭を作るうえで重要なのは、揮発成分がすべて出ていく300℃以上に加熱しながらも、残った炭素が燃えはじめる500℃以下に抑えることである。
    人々はこれまでずっと、基本的に同じ方法でそれを実現してきた。
    焚き火への空気の供給を少なくするという方法だ。
    もっとも単純な炭焼き窯は、丸太を隙聞がないように積み上げて芝士で覆ってから、下のほうに火をつける。
    全体に火が回るまでに数日かかり、その間、中を覗き込んでは、最適な温度で燃えつづけるよう空気の流入量を調節する。
    木炭作りは長い時聞がかかってあちこちが汚れるし、木の重量が60パーセント以上も減少して、蓄えられていた化学エネルギーの半分以上が無駄になってしまうが,できた炭素の純粋な塊は乾燥木材の二倍のエネルギー密度を持っている。
    また木炭には木の細胞構造が保たれているため、表面積が広く、酸素が流れ込んで急速に燃焼する。
     木のかわりに木炭を使うことで、空気の流入量を増やさなくても窯を1000℃以上まで加熱して、より強く耐水性の高い焼き物を作.れるようになった。



  • 引用文献
    • Ennos, Roland (2020) : The Age of Wood ── Our most useful material and the construction of civilization.
      • Scribner, 2020.
      • 水谷淳[訳]『「木」から辿る人類史──ヒトの進化と繁栄の秘密に迫る』, NHK出版, 2021, pp.96-99