Up 「特殊相対性理論」の「相対性」の意味 作成: 2018-01-06
更新: 2018-02-10


    相対性理論の「相対性」は,「お互い様」がこれの意味である。
    「多様性」の意味の相対性ではない。

    特殊相対性理論の「相対性」は,一方にとって他方が等速直線運動している二つの系A, Bの間に現れるものである。

    A, Bは,同じデカルト座標── xyz-正規直交基底の座標──をそれぞれ立て,それによって世界を観測する。
    このとき,つぎのことが起こる:
      AがBの正規直交基底を見ると,それはBの進行方向に縮んでいて,正規直交基底ではない。
      BがAの正規直交基底を見ると,それはAの進行方向に縮んでいて,正規直交基底ではない。
    「正規直交基底が進行方向に縮む」が「お互い様」の関係になるというわけである。 これが,相対性理論の「相対性」である。


    この現象の説明概念は,「計量」になる。
    実際,正規直交基底は,計量に拠って正規直交基底となるわけである。

    そこで,一つの正規直交系を共有できないとは,一つの計量を共有できないということである。
    そして特殊相対性理論では,これはつぎの内容になる:
      A,Bの xyz-正規直交基底の方向を合わせる。
      且つ,x方向がBの進行方向であるようにする。
      さらに,A,Bの系 (空間) を,時間軸をこれに直交するようにとったミンコフスキー空間に埋め込む。
      A,Bの相対速度をvとする。
      このとき,Bの計量に拠る「正規直交基底」の \[ ( 1, 0, 0, 0 )\\ ( 0, 1, 0, 0 )\\ ( 0, 0, 1, 0 )\\ ( 0, 0, 0, 1 ) \] は,Aの計量ではつぎのベクトルになる (Aの正規直交基底にはならない): \[ ( \gamma, - \beta\, \gamma, 0, 0 )\\ ( - \beta\, \gamma, \gamma, 0, 0 )\\ ( 0, 0, 1, 0 )\\ ( 0, 0, 0, 1 )\\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \beta \equiv \frac{v}{c}, \ \ \ \gamma \equiv \frac{1}{\sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}} \\ \] そしてこれが,お互い様の関係になる。


    ここでひとつ強調しておくことがある。
    それは,
      《「等速直線運動」は, 「慣性系」のことではない》
    である。
    なぜこれを強調するかというと,相対性理論のテクストは,特殊相対性理論を「慣性系」の論──対して,一般相対性理論を「一般系」の論──のように述べるからである。

    「慣性」とは,「無為」の様である。
    重力によって落ちたり曲げられたりするのも,慣性である。
    一般相対性理論の主題は,この「慣性」である。
    したがって,「慣性系」の理論ということになるのは,一般相対性理論の方である。

      「無為」が「等速直線運動」になるのは,ニュートン力学の話である。
      一般相対性理論では,慣性と重力が等価になる。